アニメや小説で絶大な人気を誇る『86-エイティシックス-』において、人類の脅威として立ちはだかる無人兵器「レギオン」。
圧倒的な物量と冷徹な殺戮兵器としての姿は、多くの視聴者に絶望感と同時に強い好奇心を抱かせます。
彼らは一体何者なのか、なぜ人間を襲い続けるのか、そしてその装甲の下には何が隠されているのでしょうか。
本記事では、作中で徐々に明かされていく「レギオンの正体」について、その開発経緯から恐るべき構造、そして謎多き指揮官「ノーフェイス」の真実に至るまで徹底的に解説します。
物語の核心に触れる重要な設定を整理しましたので、作品をより深く理解するための一助となれば幸いです。
『86-エイティシックス-』レギオンの正体とは?無人兵器の真実
ギアーデ帝国が開発した完全自律無人戦闘機械
レギオンの正体は、ギアーデ帝国が開発した「完全自律無人戦闘機械」です。
正式名称は「レギオン(Legion)」であり、聖書に登場する悪霊の群れを意味する言葉から名付けられました。
彼らは人間が搭乗して操縦する兵器ではなく、高度な人工知能(AI)によって自ら判断し、行動するロボット兵器です。
もともとは帝国の高い技術力によって生み出された軍事兵器であり、星暦2139年の宣戦布告と同時に全世界へ展開されました。
その圧倒的な性能と物量は、瞬く間にサンマグノリア共和国を含む周辺諸国の軍隊を壊滅状態に追い込むほどでした。
なぜ暴走したのか?レギオンの本来の目的と行動原理
レギオンが人類を襲い続ける理由は、決して「暴走」や「故障」によるものではありません。
彼らは開発時に与えられた「敵国を制圧せよ」という初期命令を、忠実に実行し続けているに過ぎないのです。
ただし、彼らを制御し停止命令を出すはずだった指揮官や管理システムが失われてしまったことが、悲劇の始まりでした。
レギオンには、人間を含む生物に類似した兵器や細菌兵器などの製造・使用を禁じる厳重なプロテクトが施されています。
しかし、そのプロテクトの裏をかくように、彼らは命令遂行の障害となる「人類」を排除対象として認識し続けています。
つまり、彼らにとっては戦争が終わっておらず、永遠に続く任務として人類との戦闘を継続しているのです。
設定されていた「寿命」とそれを克服した方法
帝国は万が一のレギオンの反乱や暴走を防ぐため、ある安全装置を組み込んでいました。
それは、OSのバージョンごとに約6年(5万時間)で中枢処理装置(CPU)が自己崩壊するという「寿命」のプログラムです。
この寿命設定により、共和国側は「数年耐えればレギオンは全停止する」と楽観視していました。
しかし、レギオンはこの変更不可能な寿命プログラムを、驚くべき方法で克服してしまいます。
それは、戦場で死亡した人間の脳構造をスキャンし、自らの中枢処理装置の代替構造図として取り込むことでした。
人類の中でも特に発達した中枢神経系である「脳」をコピーすることで、彼らはシステムの崩壊を防ぎ、半永久的に活動し続ける不死の軍団へと変貌を遂げたのです。
レギオンの中身は人間の脳?戦慄の構造と種類
レギオンが人間の脳を取り込む理由(86 レギオン脳)
前述の通り、レギオンが人間の脳を取り込む最大の理由は、自身の寿命(中枢処理装置の崩壊)を回避するためです。
帝国の滅亡により正規のアップデートを受けられなくなった彼らは、戦場で入手可能な「高性能な処理装置」として人間の脳に目をつけました。
人間の脳は極めて高度な演算能力を持っており、これを模倣・利用することで、従来のAIを超える性能を獲得することが可能になります。
特に、死後間もない脳や損傷の少ない脳は、より精度の高い構造図として利用されます。
この行動により、レギオンは単なるプログラムに従う機械から、死者の思考や戦術を学習する怪物へと進化していきました。
死者の脳をコピーした一般機「黒羊(ブラックシープ)」
「黒羊(ブラックシープ)」とは、死んでから時間が経過した遺体や、損傷の激しい脳をスキャンして作られたレギオンの総称です。
彼らは生前の人格や高度な思考能力までは再現できておらず、知能レベルは従来の人工知能より多少優れている程度にとどまります。
しかし、最大の特徴は「死に際の思考」や「最後の言葉」を機械的に繰り返す点にあります。
主人公のシンエイ・ノウゼン(シン)が持つ異能では、彼らの声が「死にたくない」「助けて」といった怨嗟の声として聞こえてきます。
黒羊の構造図は複製が可能であり、同じ脳データが複数の機体で使い回されることで、大量の軍勢を形成しています。
生きた脳を取り込んだ指揮官機「羊飼い」の能力
「羊飼い」は、生きたまま、あるいは死後直後に脳を取り込まれた特別なレギオンです。
脳の鮮度が高いため、生前の人格、記憶、そして知識がそのまま中枢処理装置として定着しています。
そのため、黒羊とは異なり人間と同等の高度な思考力、判断力、そして狡猾さを持っています。
彼らは指揮官機として他のレギオンを統率し、人間の心理を突いた作戦や、複雑な戦術を展開します。
シンの兄であるレイ(ショーレイ・ノウゼン)や、フレデリカの騎士であったキリヤ・ノウゼンなども、この羊飼いとして登場します。
羊飼いは基本的に1つの脳につき1体しか存在できませんが、撃破されそうになると予備機へデータを転送して逃亡するなど、生存能力も極めて高いのが特徴です。
共和国市民を材料にした「牧羊犬(シープドッグ)」とは
物語が進むにつれて登場する、さらに恐ろしい存在が「牧羊犬(シープドッグ)」です。
これは、捕獲された共和国市民などを材料にして作られた、羊飼いの簡易量産型とも言える存在です。
羊飼いのような「人格」があると反乱のリスクや精神的な不安定さが残るため、牧羊犬では記憶中枢を意図的に破壊・削除しています。
これにより、人間並みの戦闘技術や思考力を持ちながら、感情や自我を持たない純粋な戦闘マシーンが完成しました。
彼らの登場により、レギオンの戦術はさらに洗練され、人類側にとって極めて厄介な敵となります。
レギオンの総指揮官「ノーフェイス」の正体は誰なのか
ノーフェイス(無貌)の役割と作中での描写
「ノーフェイス(無貌)」は、全レギオンを統括する総指揮官にあたる個体です。
彼は特定の機体名ではなく、レギオンのネットワーク全体を指揮する中枢存在として描かれています。
作中では、流暢な言葉で語りかける知的な存在として登場し、人類殲滅作戦を冷徹に指揮しています。
彼の目的は、レギオンの勢力圏を拡大し、最終的には人類という種を根絶やしにすることにあるようです。
その冷静沈着な語り口や、共和国の事情に精通している様子から、元は相当な地位にあった人物であることが示唆されています。
正体はレーナの父「ヴァーツラフ・ミリーゼ」説が濃厚な理由
ファンの間や物語の描写から、ノーフェイスの正体として最も有力視されているのが、ヒロインであるレーナの父「ヴァーツラフ・ミリーゼ」です。
ヴァーツラフは共和国軍の元大佐であり、かつてレギオンとの戦いで戦死したとされています。
彼がノーフェイスであるとされる根拠は複数あります。
まず、ノーフェイスが共和国の内部事情や防衛線について詳しすぎることです。
また、アニメや原作小説において、ノーフェイスの声や口調がヴァーツラフのそれと酷似している演出がなされています。
さらに、彼が取り込まれた経緯として、戦場で遺体が回収されなかった可能性が高いことも挙げられます。
妻と娘の顔を忘れたという発言の意味と考察
ノーフェイス=ヴァーツラフ説を決定づける要素の一つに、彼の「妻と娘の顔を思い出せない」という主旨の発言があります。
ヴァーツラフには愛する妻と、娘のレーナがいました。
しかし、レギオンに取り込まれ、膨大なデータと演算の中で個としての自我が変質していく過程で、最も大切だったはずの記憶が欠落してしまったと考えられます。
あるいは、レギオンとしての目的遂行のために、人間的な感情や記憶が邪魔なノイズとして処理された可能性もあります。
「顔がない(ノーフェイス)」という呼び名は、彼が物理的な顔を持たないだけでなく、かつての愛する者たちの顔すら失ってしまった悲劇的な状態を象徴しているのかもしれません。
レギオンの生産方法と増殖の仕組み
自動工場型(ヴァイゼル)による無限の生産体制
レギオンの恐ろしさは、その個体性能だけでなく、尽きることのない生産能力にあります。
彼らは「自動工場型(ヴァイゼル)」と呼ばれる生産プラントを持っており、これらは地下深くや安全な後方地域に設置されています。
自動工場型は、資源さえあれば無人でレギオンを製造し続けることが可能です。
戦場で破壊された味方の機体や、敵の兵器の残骸を回収し、それをリサイクルして新たな機体を生み出します。
この完全自動化されたサイクルにより、人類側がどれだけレギオンを倒しても、次から次へと新品の機体が前線に送り込まれてくるのです。
エネルギーと資源の確保方法(発電型と採掘の仕組み)
レギオンの活動を支えるエネルギー供給もまた、自律的に行われています。
地熱発電や太陽光発電を行う「発電型(エデルバッハ)」と呼ばれるユニットが存在し、これらが軍団全体の電力を賄っています。
また、地下資源の採掘も自ら行っており、必要な金属やレアアースを確保しています。
彼らは制圧した地域のインフラを最大限に利用し、都市の電力網や工場を自らの生存圏に取り込んでいきます。
このように、レギオンは補給線を必要としない独立した生態系のようなシステムを構築しており、兵糧攻めのような戦術が通用しない強みを持っています。
作中に登場する主なレギオンの種類一覧と役割
斥候型(アーマイゼ)・近接猟兵型(グラウヴォルフ)
斥候型(アーマイゼ)
「蟻」の名を持つ、最も数が多いレギオンです。
高精度のセンサーと通信機能を持ち、索敵や着弾観測を行います。
対人用の機関銃を装備しており、歩兵にとっては十分な脅威となります。
近接猟兵型(グラウヴォルフ)
「灰色狼」の名を持つ、高機動型のレギオンです。
前脚に高周波ブレードを装備し、驚異的なスピードで懐に飛び込んで敵を切り裂きます。
また、背部には対戦車ミサイルも搭載しており、遠近両方に対応できる厄介な敵です。
戦車型(レーヴェ)・重戦車型(ディノザウリア)
戦車型(レーヴェ)
「獅子」の名を持つ、レギオン軍の主力戦車です。
120mm滑腔砲を主砲とし、堅牢な装甲と強大な火力を誇ります。
ジャガーノートなどの軽装甲兵器では正面からの撃破が困難な相手です。
重戦車型(ディノザウリア)
「恐竜」の名を持つ、最大最強の地上戦力です。
155mm砲を搭載し、その巨体と重装甲は現用兵器の中でもトップクラスです。
羊飼いなどの指揮官が搭乗する機体として使われることが多く、物語のボス的な役割を果たします。
電磁加速砲型(モルフォ)などの規格外兵器
電磁加速砲型(モルフォ)
「モルフォ蝶」の名を持つ、超長距離砲撃が可能な巨大レギオンです。
800mmレールガンを搭載し、数百キロメートル先から正確無比な砲撃を行います。
その射程と威力は戦略兵器レベルであり、各国の防衛線を一方的に破壊する脅威となります。
電磁砲艦型(ノクティルカ)などの特殊個体
電磁砲艦型(ノクティルカ)
海を制圧するために作られた、巨大な戦艦型のレギオンです。
レールガンに加え、多数の電磁砲や対空兵装を備えており、単独で艦隊を壊滅させる戦闘能力を持ちます。
阻電攪乱型(アインタークスフリーゲ)
「アゲハ蝶」のような小型の飛行型レギオンです。
大群で空を覆い尽くし、強力な電磁妨害(ジャミング)を行うことで、人類側の通信やレーダーを使用不能にします。
ギアーデ帝国の滅亡とレギオンとの関係
開発国ギアーデ帝国はなぜレギオンに滅ぼされたのか
皮肉なことに、レギオンを生み出したギアーデ帝国自身が、最初の犠牲者となりました。
帝国はレギオンを開発し周辺国へ侵攻を開始しましたが、その直後に国内で市民革命が勃発しました。
この内乱により帝国の指揮系統が混乱・崩壊し、レギオンへの制御コードの更新や停止命令が出せなくなってしまったのです。
結果として、制御を失った(あるいは初期命令に従い続けた)レギオンは、新生した「ギアーデ連邦」をも敵とみなし、かつての主である帝国領土を蹂躙しました。
帝国は自らが生み出した最強の軍隊によって、その歴史に幕を下ろすことになったのです。
帝国滅亡後もレギオンが戦争を止めない理由
帝国が滅び、ギアーデ連邦として生まれ変わった後も、レギオンの戦争は終わりません。
彼らにとって重要なのは「帝国の敵を倒す」というプログラム上の命令だけであり、現在の政治体制や国境線は無意味だからです。
また、前述した通り、彼らは自律的にエネルギーを確保し、自己増殖し、指揮官(羊飼い)を作り出すシステムを確立してしまいました。
もはや人間によるメンテナンスや補給を必要としない「独立した機械生命体」のような存在となってしまったため、外部からの停止は事実上不可能となっています。
彼らを止める唯一の方法は、全てを物理的に破壊し尽くすか、中枢の管理システムを完全に無力化するしか残されていないのです。
まとめ:86 レギオン 正体
最後に、レギオンの正体と本質について要点をまとめます。
- レギオンはギアーデ帝国が開発した完全自律型の無人戦闘兵器である
- 暴走の原因は制御系の喪失であり初期命令を忠実に実行し続けている
- 本来設定されていた寿命を人間の脳を取り込むことで克服した
- 一般機の黒羊は死者の脳をコピーしており死に際の声を繰り返す
- 指揮官機の羊飼いは生きた脳を使い高い知能と戦術駆使能力を持つ
- 総指揮官ノーフェイスの正体はレーナの父ヴァーツラフ説が濃厚である
- 自動工場型により資源がある限り無限に増殖し続けるシステムを持つ
- 発電や採掘も自律的に行い人間による補給を必要としない
- 開発国の帝国自身がレギオンによって滅ぼされる皮肉な結末を迎えた
- 彼らを止めるには全機破壊か中枢システムの完全停止しかない

