【ハンターハンター】メルエムの元の人間は誰？正体とポックル説の真相を考察

『HUNTER×HUNTER』の中でも屈指の人気を誇るキメラアント編。

その絶対的な王として君臨し、読者に絶望と感動を与えたキャラクターがメルエムです。

生まれながらにして生物の頂点に立つ存在であり、その強さとカリスマ性は計り知れません。

しかし、その圧倒的な存在感とは裏腹に、彼の出自には多くの謎が残されています。

ファンの間で最も白熱する議論の一つが、「メルエムの元の人間は一体誰なのか？」という大きな疑問符です。

彼の正体や、誰かの生まれ変わりなのかという問いは、キメラアントの特異な生態である「摂食交配」が深く関わっています。

この記事では、作中の描写や設定を丹念に紐解き、メルエムの元の人間をめぐる謎、様々な説、そして作中描写から読み取れる手がかりをもとに、その真相に深く迫っていきます。

メルエムの元の人間は？正体に関する結論と根拠

メルエムの正体（元の人間としての）は不明

結論から申し上げると、メルエムの「元の人間」が特定の誰か一人であるという明確な描写は作中になく、その正体は「不明」です。

これは、彼が他のキメラアントとは根本的に異なる、特別な目的を持って生み出された存在であるためです。

メルエムは、キメラアントという種の頂点に君臨し、全ての生物を統べる「王」となるべく誕生しました。

そのため、特定の一個人の人格や記憶を色濃く継承するのではなく、女王が捕食した膨大な数の生物、特に優れた人間の遺伝情報が凝縮された、全く新しい生命体としてデザインされたのです。

例えば、王直属護衛軍であるネフェルピトーやシャウアプフが、特定の記憶の断片や性質を宿している可能性が示唆されるのとは対照的です。

メルエムには、そうした過去の人間性をうかがわせるような描写が見当たりません。

彼の存在は、過去の誰かの人生の「続き」ではなく、キメラアントという種の新たな「始まり」そのものであったと言えるでしょう。

摂食交配と「元の人間」の情報継承

メルエムの正体がなぜこれほどまでに謎に包まれているのか、その最大の理由はキメラアントの特異な繁殖システムである「摂食交配（せっしょくこうはい）」にあります。

この摂食交配とは、キメラアントの女王が食べた他の生物の遺伝子や形質を、次に産む子供に色濃く反映させる能力のことです。

この能力により、キメラアントは他の生物の優れた点を効率的に取り込み、世代を重ねるごとに驚異的なスピードで進化を遂げることが可能になります。

摂食交配の最も特異な点は、DNA情報だけでなく、食べた生物が持つ「記憶」や後天的に習得した「念能力」といった情報まで継承できることにあります。

女王は捕食した生物を体内で瞬時に分解・解析し、その特性を次世代のキメラアントの設計図に組み込むのです。

メルエムを産むにあたり、女王は「選りすぐりの栄養」として、特に人間を大量に摂取しました。

これは、特定の個人の能力や記憶を再現するためではなく、様々な生物の長所を掛け合わせ、最も強力で完璧な「王」を創造するためでした。

その結果、あまりにも多様で膨大な情報が複雑に統合され、特定の一個人の記憶や人格は、広大な情報の海の中に埋もれてしまったと考えるのが自然です。

キメラアントの元の人間一覧【メルエムとの比較】

メルエムが特定の個人の記憶を持たなかった一方で、他の多くのキメラアント、特に師団長クラスの個体は、元の人間だった頃の記憶や人格の一部を保持していました。

この明確な対比は、メルエムがいかに「王」として異質な存在であったかを浮き彫りにします。

一般的な兵隊や師団長レベルでは、ベースとなった個体の情報がある程度強く反映される傾向にあったようです。

しかし、王であるメルエムは、それらとは比較にならないほど多くの情報から成る、特別な存在でした。

以下に、元の記憶を保持していた主要なキメラアントを比較対象としてまとめます。

キメラアント名	元の人間	特徴的な記憶・人格
コルト	クルト	NGL出身の少年。キメラアントになった後も妹レイナを案じる強い気持ちと、人間としての名前を覚えていた。女王の死後、人間との共存を模索する道を選ぶ。
ウェルフィン	ザイカハル	NGLの裏社会に生きていた男。人間だった頃の仲間への執着と、常に相手を疑う猜疑心の強い性格が色濃く残っていた。
メレオロン	ジェイル	NGL出身。キメラアントに殺された養父の仇を討つという、人間時代の強い目的意識を保持し、ゴンたちに協力した。
ジャイロ	ジャイロ	NGLの創設者であり、悪のカリスマ。キメラアントとして生まれ変わった後も王に一切の忠誠を誓わず、人間時代の野望を継続しようと独自の意志で去っていった。
シドレ（レイナ）	レイナ	コルトの妹。人間だった頃の記憶は曖昧だったが、母親からもらった人形を大切にしており、物語の終盤で兄との再会を果たし記憶を取り戻した。

メルエムは誰の生まれ変わりなのか？【考察】

それでは、メルエムは特定の誰かの「生まれ変わり」なのでしょうか。

この問いに対する答えも「ノー」です。

キメラアントの情報継承システムは、魂が別の肉体に宿る輪廻転生のような、スピリチュアルでオカルト的な現象とは全く異なります。

これは、あくまで女王が捕食した生物の情報を物理的に再構成する、生物学的なシステムなのです。

例えば、コルトがクルトとしての記憶を持っていたのは、彼の魂が鷹の体に宿ったからではありません。

クルトという人間の肉体や脳に刻まれた設計情報が、女王の胎内で再利用・再設計され、キメラアントとして新たに出力された結果です。

メルエムの場合、インプットされた情報源が膨大すぎます。

そのため、「○○の生まれ変わり」と呼べるような、物語の核となる特定の個人のアイデンティティは存在しないと考えるのが妥当でしょう。

彼は、過去の誰かの人生をなぞるのではなく、全く新しい「メルエム」という個としてこの世に誕生したのです。

作中描写から考察するメルエムの「元の人間」の手がかり

メルエムの「元の人間」を直接的に特定できるような決定的な手がかりは、作中には存在しません。

しかし、彼の能力や思考、行動の節々から、彼が「単一の個人」ではなく「多数の集合体」であることを間接的に読み取ることができます。

オーラを食べる能力

ネテロとの死闘の後、瀕死の状態になったメルエムは、護衛軍のシャウアプフとモントゥトゥユピーの肉体を食べることで復活を遂げました。

その際、彼らのオーラや能力を自身のものとして吸収するという、驚異的な能力を見せつけます。

この能力は、まさに女王が行っていた「摂食交配」をメルエム自身が体現したものです。

食べた相手の力を自分のものにするこの特性は、彼が特定の誰かではなく、あらゆるものを捕食し進化する「キメラアントの王」としての性質を象徴していると言えます。

名前に興味を示さなかったこと

メルエムは当初、自身の名前にすら全く興味を示しませんでした。

女王が死の間際に彼の名前を告げようとした時も、彼はそれを意に介さず、冷徹に振る舞いました。

これは、個人としてのアイデンティティよりも、「王」という役割、あるいは機能こそが彼の全てであったことの表れです。

特定の「元の人間」が存在しないことの間接的な証明とも考えられるでしょう。

メルエムの元の人間に関する説と内面の変化

メルエムのポックル説の真相を解説

ファンの間で根強く囁かれる説の一つに「メルエム＝ポックル説」があります。

しかし、ポックルがメルエムの「元の人間」そのものであるという説は、信憑性が低いと言わざるを得ません。

ただ、この説が生まれるには無視できない、興味深い関連性が指摘されています。

この説の核心は、メルエムの念能力にポックルの影響が見られるのではないか、という考察にあります。

ポックルは、キメラアントに捕らえられた最初の念能力者の一人であり、ネフェルピトーによって脳を詳細に分析された後、女王の食料になった可能性が極めて高いです。

彼の念系統は「放出系」でした。

一方で、メルエムが食べた者のオーラを光子として周囲に放つ能力を見せたことから、彼の念系統も「放出系」である可能性が高いと推測されています。

ここから、女王が初めて本格的に分析した念能力者であるポックルの情報が、生まれてくる王の能力設計のベースの一つ、あるいは雛形になったのではないか、という考察が生まれました。

これはあくまで能力への影響であり、ポックルの人格や記憶がメルエムになったわけではない、というのが真相に近い見解でしょう。

メルエムのクルト説の真相は本当か？

メルエムの元の人間として、クルト（コルトの人間時代の名前）やその妹レイナの名前が挙げられることもあります。

しかし、この説は作中の描写から明確に否定することが可能です。

前述の通り、クルトは鷹の姿をしたキメラアント「コルト」として、レイナもまた「シドレ」という名のキメラアントとして、それぞれ独立した個体として生きていたことが確認されています。

一人の人間が、複数の異なるキメラアントの元になることは、摂食交配のシステム上考えられません。

コルトは最後まで妹を想い、人間との共存の道を模索しました。

シドレ（レイナ）もまた、物語の終盤で兄であるコルトと再会し、記憶を取り戻しています。

彼らは彼ら自身の物語を生きており、メルエムの物語とは交わらないのです。

この説は、キメラアント編の悲劇的な人間関係の中で、主要なキャラクターたちの間に何とか繋がりを見出したいという、ファンの願望や想像が色濃く反映された考察の一つと言えるかもしれません。

メルエムに元の人間としての記憶はあったのか？

結論として、メルエムが元の人間としての具体的な記憶を保持していたことを示す描写は、作中に一切ありません。

彼の行動原理は、全てが生まれながらの「王」としての生物学的本能と、生まれてから後に出会う軍儀の天才少女コムギとの関係性によってのみ形成されています。

過去の誰かの記憶に影響されたような、個人的なトラウマや特定の物事への執着といった言動は皆無です。

物語序盤のメルエムは、感情の起伏が極めて乏しく、邪魔者は母親であろうと排除するという、極めて合理的かつ冷徹な思考で行動していました。

人間的な情動や記憶に由来するであろう複雑な心の葛藤は、コムギに出会うまで見られませんでした。

もし彼の魂の奥底に元の記憶が眠っていたのであれば、何かの拍子にフラッシュバックが起きたり、無意識のうちに人間的な行動を取ったりといった描写があったはずですが、そうした伏線は一切ありませんでした。

彼の葛藤は全て、生まれてからの経験によって、ゼロから生じたものだったのです。

メルエムの人間性は「元の人間」由来か？

メルエムが物語の終盤で見せた驚くべき人間性の開花は、「元の人間」に由来するものではなく、ひとえにコムギとの出会いを通じて後天的に学習・獲得したものであると断言できます。

彼の物語は、生まれ持った性質がいかにして他者との関わりによって変化していくかを描いた、壮大な記録でもあるのです。

当初、人間を単なる食料としか見ていなかったメルエム。

しかし、暇つぶしとして始めた盤上の遊戯「軍儀」で、盲目の少女コムギに一度として勝つことができませんでした。

絶対的な力では決して測れない「才能」という尺度、そして命を懸けて盤に向かうコムギの純粋で穢れなき姿に触れたことで、彼の価値観は根底から覆されます。

コムギを守ろうとして無意識にネテロの攻撃を避けたり、自らの未熟さを償うために自らの腕を引きちぎったり、毒に侵されながらも最期に彼女の名前を思い出そうと苦悩したりする姿は、初期の暴君からは想像もできないほどの変化です。

これは、彼の内に眠っていた元の誰かの優しさが目覚めたのではありません。

メルエムという一個体が、コムギという他者と関わる中で、ゼロから「敬意」「恐怖」「愛」といった複雑な感情を学び、獲得していった、全く新しい人間性の誕生の瞬間だったのです。

【総括】メルエムの元の人間についての見解

これまでの全ての考察を総合すると、メルエムの「元の人間」は特定の誰か一人ではなく、「女王が王を創るために捕食した、無数の生命情報の集合体」と結論付けるのが最も合理的かつ妥当な見解です。

作中のあらゆる描写が、彼が他のキメラアントとは全く異なる、特別な出自を持つことを示唆しています。

ポックルやクルトといった特定の個人に由来するという説は、いずれも決定的な証拠に欠けており、物語の整合性という観点からも矛盾が生じます。

メルエムは、過去の誰かの人生をなぞる「生まれ変わり」として生を受けたのではありませんでした。

彼は、暴力と破壊の化身として生まれながら、一人の少女との出会いを経て「個」として目覚め、愛を知り、その短い生涯を静かに終えました。

彼の存在は、我々読者に対し、生まれや出自がいかに過酷なものであっても、その後の生き方、誰と出会い、何を大切にするかによって、その存在の価値や意味は変えられるのだと、力強く問いかけているのかもしれません。

まとめ：メルエムの元の人間についての最終考察