『呪術廻戦』で圧倒的な強さを誇る呪いの王・両面宿儺。
彼の強さの秘密は、自身の術式だけでなく、かつて振るったとされる二つの特級呪具にも隠されています。
特に物語の重要な局面で登場した「神武解(かむとけ)」は、その誕生の経緯に平安時代の術師「万(よろず)」との深い関係があり、多くの読者の注目を集めました。
また、謎に包まれたもう一つの呪具「飛天(ひてん)」の存在も、宿儺の全盛期の力を考察する上で欠かせません。
この記事では、宿儺の呪具「かむとけ」の正体、元ネタ、そして「飛天」との関係性、さらには「かむとけ没収」の驚きの展開まで、詳しく解説していきます。
宿儺の呪具「かむとけ」の正体を徹底解説
宿儺の神武解とはどんな呪具?
宿儺の神武解(かむとけ)とは、一言で言うと「強力な雷撃を放つ特級呪具」です。
この呪具が初めて作中でその姿を現したのは、宿儺が伏黒恵の肉体を乗っ取り、同じく受肉した古代の術師・鹿紫雲一と対峙した場面でした。
宿儺が「懐かしいな」と呟きながら手にしたことから、彼にとって馴染み深い、平安時代から続く因縁の武器であることが示唆されています。
神武解の形状と能力
その形状は、仏教の法具である「金剛杵(こんごうしょ)」に非常によく似ています。
両端が鋭く尖った短い武具で、宿儺は四本ある腕の一本でこれを軽々と握っていました。
神武解の能力は極めてシンプルでありながら、その威力は絶大です。
呪具を振るうことで、天から凄まじい規模の雷を落とし、広範囲を一瞬で殲滅します。
作中では、鹿紫雲一が自身の呪力特性により電気への完全な耐性を持っていたため、直接的なダメージには繋がりませんでした。
しかし、その一撃が持つ破壊の規模は、並の術師であれば防ぎようもなく、一瞬で塵と化してしまうほどのエネルギーを秘めていることがうかがえます。
この能力は、宿儺が元々持つ斬撃の術式「解(かい)」や「捌(はち)」とは全く異なる性質のものです。
これにより、宿儺は近接戦闘の斬撃に加え、遠距離からの広範囲攻撃という新たな選択肢を得ることになり、戦闘の幅を格段に広げました。
「呪いの王」と呼ばれる所以は、こうした多彩かつ強力な攻撃手段を、状況に応じて的確に使い分ける戦術眼にもあると言えるでしょう。
神武解の元ネタは日本の神話?
「神武解」という特徴的な名前は、その由来について多くの考察を呼んでいます。
作者の芥見下々先生が、どのような意図を込めて名付けたのかを紐解くと、この呪具への理解がさらに深まります。
元ネタとして考えられる説は、主に以下の三つです。
元ネタの説 | 由来と解説 |
---|---|
古語「神解け」説 | 古い日本語で「神解け(かむとけ)」または「霹靂(かむとけ)」は「落雷」を意味する言葉でした。雷撃を放つ能力と完全に一致するため、最も有力な説とされています。 |
「神武天皇」説 | 日本の初代天皇である「神武天皇」を連想させる名前です。「神武」には「神のような武威」という意味があり、呪いの王が手にするにふさわしい名前と言えます。 |
仏教法具「ヴァジュラ」説 | 形状が酷似しているインド神話の雷帝インドラの武器「ヴァジュラ(金剛杵)」が元ネタという説です。ヴァジュラも雷を操る力を持ち、あらゆるものを打ち砕くとされています。 |
これらの説はそれぞれ独立しているわけではなく、相互に影響し合っていると考えられます。
作者は、古語である「かむとけ(落雷)」という言葉の響きと意味をベースに、神武天皇が持つ「絶対的な武」のイメージを重ね合わせ、その形状を仏教法具「ヴァジュラ」から引用したのかもしれません。
このように、一つの呪具に多層的な意味と背景を持たせることで、「神武解」という存在に深みを与えているのです。
宿儺と万の関係が誕生のきっかけ
特級呪具「神武解」が現代に蘇った背景には、単なる偶然や宿儺の力だけでは説明できない、一人の術師の千年越しの歪んだ愛が深く関わっています。
その術師の名は、万(よろず)。
彼女と宿儺の関係こそが、「神武解」誕生の直接的なきっかけとなりました。
万は、宿儺と同じ平安時代を生きた強力な術師でした。
彼女が使う「構築術式」は、呪力からあらゆる物質をゼロから作り出すという非常に高度なもので、その実力は宿儺自身も「雑魚ではない」と認めるほどです。
しかし、彼女の関心は自身の強さの追求にはなく、ただひたすらに両面宿儺にのみ向けられていました。
彼女は宿儺に恋をしていましたが、その感情は一般的な思慕とはかけ離れた、狂気的で歪んだものでした。
彼女の願いは、宿儺に愛されることではなく、「宿儺を自身の手で殺す」か「宿儺によって自分が殺される」ことで、彼の記憶に永遠に刻まれることでした。
千年の時を経て、万は伏黒恵の義姉・津美紀の肉体に受肉して現代に復活し、奇しくも伏黒恵の肉体を乗っ取った宿儺と再会します。
万は持てる力のすべてを懸けて宿儺に挑みますが、その力は及ばず、敗北を悟ります。
しかし彼女は絶望せず、敬愛する宿儺の手で殺されるという願いが叶うことに、至上の喜びを感じていました。
そして死の間際、彼女は最後の呪力を振り絞り、構築術式を発動します。
「…愛ほど歪んだ呪いはないよ」
この言葉と共に、彼女が宿儺への置き土産として遺した最後の贈り物こそが、特級呪具「神武解」だったのです。
万は、宿儺がかつて失った呪具を、自身の命と引き換えに完璧に再現しました。
それは、彼を殺せなかった彼女が、彼の力の一部となって永遠に共にあり続けるための、究極の愛の形だったのかもしれません。
かむとけが没収された驚きの展開
万の命と引き換えに現代に蘇り、宿儺の新たな力となるかと思われた「神武解」でしたが、その運命は誰もが予期せぬ形で転換点を迎えます。
きっかけは、元弁護士という異色の経歴を持つ現代の術師、日車寛見(ひぐるま ひろみ)との対決でした。
この戦いの中で、前代未聞の「呪具没収」という驚きの展開が起こります。
日車の領域展開「誅伏賜死(ちゅうぶくしし)」は、領域内の相手と強制的に裁判を開く能力です。
式神「ジャッジマン」が下した有罪判決の効果として、対象者の能力を「没収」することができます。
五条悟を失い、窮地に立たされた呪術師側は、最後の切り札の一人として日車を宿儺にぶつけました。
日車は領域を展開し、宿儺の罪状に対して有罪判決を勝ち取ります。
そしてジャッジマンが「没収」を宣告したとき、誰もが宿儺の術式「御厨子」が対象になるものと予測しました。
しかし、実際に没収されたのは、宿儺の術式ではなく、彼が手にしていた呪具「神武解」だったのです。
この結果には、術者である日車自身も驚きを隠せませんでした。
なぜ術式ではなく呪具が没収されたのか、明確な理由は語られていませんが、二つの可能性が考えられます。
一つは、宿儺の術式が魂ではなく肉体に刻まれている特殊なもので、没収の対象から外れたという説。
もう一つは、万が命懸けで構築した「神武解」が、単なる物体ではなく、彼女の術式と呪いが色濃く宿った「術式を内包した呪具」と見なされたという説です。
いずれにせよ、この「かむとけ没収」は、絶対的な強者である宿儺にとって想定外の打撃となりました。
彼は雷撃という強力な手札を失い、物語に新たな緊張感をもたらしました。
万の愛の結晶であった「神武解」が、数奇な運命を辿り、最終的に宿儺を追い詰める一因となったのは、非常に皮肉な巡り合わせと言えるでしょう。
宿儺の呪具「かむとけ」と謎多き「飛天」
宿儺が振るったもう一つの呪具「飛天」
宿儺の強さを語る上で、「神武解」と対をなす存在として考察されているのが、もう一つの呪具「飛天(ひてん)」です。
「神武解」が現代でその姿を現したのに対し、「飛天」は未だ多くの謎に包まれています。
この呪具の存在が示唆されたのは、単行本14巻の117話の扉絵です。
そこに描かれた平安時代の宿儺は、四本ある腕に二種類の武具を握っていました。
一つは「神武解」と思われる金剛杵。
そしてもう一つが、三つの刃を持つ長柄の武器、すなわち「三叉戟(さんさげき)」のような形状をした呪具です。
これこそが「飛天」ではないかとファンの間では考えられています。
宿儺が四本の腕を持つという異形の姿は、彼の戦闘能力を飛躍的に高めています。
例えば、二本の腕で術式の印を結びながら、残りの二本の腕で呪具を振るうといった、他の術師には不可能な戦い方が可能です。
このことから、「飛天」は三叉戟という形状を活かし、近接から中距離での刺突や斬撃に特化した武器であった可能性が高いと推測されます。
しかし、現代の物語において「飛天」は登場していません。
万が「神武解」を構築した際にも、「飛天」については言及がありませんでした。
平安の世の終わりに失われてしまったのか、それともどこかに現存しているのか。
その行方は、宿儺の全盛期の力が完全に復活するための最後の鍵として、今後の物語で重要な役割を果たすかもしれません。
飛天とかむとけ、二つの呪具の関係
「飛天」と「神武解(かむとけ)」は、単に二つの強力な呪具というだけでなく、互いに連携し、宿儺の戦闘能力を最大化するための一対の武器だったと考えられます。
宿儺が持つ四本の腕は、この二つの呪具を同時に、かつ効果的に使用するためにあったと言っても過言ではありません。
二つの呪具の役割分担を考察すると、以下のような戦闘スタイルが想像できます。
- 神武解(かむとけ):遠距離から広範囲に雷撃を放ち、敵を牽制または殲滅する。
- 飛天(ひてん):雷撃を掻い潜り、接近してきた敵を三叉戟で迎撃する。近〜中距離での物理的な攻防を担う。
このように、遠距離の制圧攻撃と近距離の迎撃能力を両立させることで、宿儺は一人で一個旅団に匹敵すると言われるほどの、圧倒的な戦闘能力を発揮していたのでしょう。
平安時代の術師たちが束になっても彼に敵わなかったという伝説は、彼の卓越した呪術の腕だけでなく、この異形と二つの特級呪具を完璧に使いこなす戦闘術にあったのかもしれません。
二つが揃って初めて、宿儺の全盛期の力が発揮されるのだとすれば、「飛天」の不在は、現代の宿儺がまだ本領を発揮しきれていない可能性を示唆しています。
「神武解」だけでもあれだけの脅威ですから、「飛天」が加わった宿儺がどれほどの強さになるのかは、想像するだに恐ろしいものがあります。
呪術廻戦の「飛天」という呪具の謎
前述の通り、呪具「飛天」は、その存在が示唆されているものの、多くの謎に包まれています。
現在までに分かっていることと、未だ明かされていない謎を整理してみましょう。
「飛天」について分かっていること
- 使用者:平安時代の両面宿儺が使用していました。
- 形状:三つの刃を持つ長柄の武器、三叉戟(さんさげき)に似た形をしています。
- 使用法:「神武解」と共に、四本ある腕で同時に使用されていたと考えられています。
「飛天」に関する未解明の謎
- 具体的な能力:「神武解」が雷撃を放つように、「飛天」にどのような特殊能力があったのかは全く分かっていません。単純な物理攻撃用の武器なのか、あるいは何か特別な術式が付与されていたのか、考察が分かれるところです。
- 現在の行方:現代の物語において、「飛天」は一度も登場していません。宿儺が呪物として分割される際に破壊されたのか、あるいは世界のどこかに現存しているのか、その行方は不明です。
- 万が再現しなかった理由:万は「神武解」を命懸けで再現しましたが、「飛天」は作りませんでした。宿儺の記憶になかったのか、それとも構築術式でも再現不可能なほど複雑な呪具だったのか、この点も大きな謎として残されています。
これらの謎は、今後の物語の展開において、重要な伏線となる可能性があります。
もし「飛天」が再び宿儺の手に渡るようなことがあれば、戦いのパワーバランスが大きく覆ることは間違いないでしょう。
呪術廻戦で語られる「飛天能力」とは
興味深いことに、「飛天」という言葉は、呪具そのものだけでなく、別の文脈でもファンの間で広く使われています。
それが「飛天能力」という通称です。
これは公式な術式名ではなく、五条悟や両面宿儺といった作中最高峰の術師たちが見せる、驚異的な空中機動能力を指す言葉として定着しています。
作中で彼らは、まるで目に見えない足場があるかのように空中を自在に蹴って移動し、三次元的な高速戦闘を繰り広げます。
この人間離れした動きが、仏教美術などで描かれる、仏の周りを優雅に飛び回る天人「飛天」を彷彿とさせることから、ファンは敬意と畏怖を込めて「飛天能力」と呼ぶようになりました。
各キャラクターの空中機動の原理
- 五条悟:彼の生得術式である「無下限呪術」の応用とされています。術式によって自身の周囲に創り出した不可侵の空間を足場にしたり、空間を操作したりすることで、浮遊や高速移動を可能にしていると考えられます。
- 両面宿儺:彼の空中機動の原理は明確には説明されていません。桁外れの呪力操作技術によって、足元で呪力を爆発させて推進力にしたり、空間そのものを呪力で固めて蹴ったりといった、常人には不可能な芸当を可能にしていると推測されます。
この「飛天能力」という通称は、宿儺がかつて使用した呪具「飛天」の名と偶然にも一致しますが、両者に直接的な関係性があるという描写は今のところありません。
しかし、もし呪具「飛天」に、所有者の機動力を高めたり、空中での姿勢制御を補助したりするような能力が付与されていたとしたら、という想像は非常に魅力的です。
宿儺の空中での圧倒的な戦闘能力は、この呪具「飛天」によってさらに強化されていたのかもしれない、と考えると、物語の深みが一層増します。
まとめ:宿儺の呪具かむとけの謎と今後の展開
- 宿儺の呪具「神武解(かむとけ)」は強力な雷を放つ特級呪具である
- その元ネタは「落雷」を意味する古語や仏教法具「ヴァジュラ」に由来する
- 術師「万」が宿儺への歪んだ愛から命と引き換えに構築した
- 日車寛見の領域展開によって「没収」され、宿儺は一時的にその力を失う
- もう一つの呪具「飛天」は三叉戟のような形状を持つ謎多き武器である
- 「飛天」と「神武解」は宿儺が四本の腕で同時に振るった一対の呪具と考えられる
- 「飛天」の具体的な能力や現在の行方は明かされておらず、今後の伏線となりうる
- 「飛天能力」とは術師の超人的な空中機動を指すファンによる通称である
- 呪具「飛天」と「飛天能力」という言葉の間に直接的な関係性は示されていない
- 二つの呪具は、呪いの王・両面宿儺の絶対的な強さと孤独を象徴する存在である