未来島エッグヘッド編のクライマックスにおいて、読者に大きな衝撃を与えたのが「バスターコール」の発動です。
かつてオハラやエニエス・ロビーを焦土と化した無差別攻撃が、なぜ世界最高峰の頭脳が集まるこの島に向けられたのでしょうか。
今回のバスターコールは、五老星であるサターン聖自らが指揮を執り、海軍大将黄猿までもが動くという、過去に類を見ない最大級の規模で行われました。
この記事では、エッグヘッドに対するバスターコール発動の真の意味と、そこに集結した戦力、そして物語に刻まれた結末について詳しく解説します。
エッグヘッドにバスターコールが発動された理由
世界政府にとって、エッグヘッドは科学技術の粋を集めた貴重な資産であり、本来であれば保護すべき対象です。
しかし、五老星ジェイガルシア・サターン聖は、その価値を切り捨ててでも島全体を破壊するという冷徹な決断を下しました。
なぜここまでの強硬手段に出る必要があったのか、その背景には決して世に出てはならない「不都合な真実」が存在しています。
なぜサターン聖は破壊を命じたのか
サターン聖がバスターコールを命じた最大の理由は、ベガパンクの研究が世界政府のタブーである「空白の100年」に触れてしまったことにあります。
オハラの意志を継ぎ、歴史の真実を解き明かそうとしたベガパンクの探究心は、政府にとって看過できない脅威と認定されました。
さらに、エッグヘッドには「太陽の神ニカ」として覚醒したルフィ、絶滅種バッカニア族の血を引くくまとボニーが集結していました。
彼らは政府が長年恐れてきた存在そのものであり、サターン聖にとっては、科学技術の損失以上に彼らを一網打尽にして消し去ることが最優先事項だったのです。
科学の進歩よりも優先される「不都合な真実」の消去
バスターコール発動の直前、ベガパンクは「ここを壊せば科学の進歩は100年遅れる」とサターン聖に懇願し、攻撃の中止を求めました。
しかし、サターン聖は「進歩など必要ない」と一蹴し、その訴えを冷酷に退けています。
このやり取りは、世界政府がいかに「自分たちの支配体制の維持」を最優先しているかを象徴するシーンと言えるでしょう。
どれほど人類に貢献する技術であっても、政府の権威を揺るがす可能性があるならば、躊躇なく排除するという彼らの歪んだ正義が浮き彫りになりました。
通常とは桁違い!今回のバスターコールの戦力規模
「バスターコール」といえば、通常は海軍中将5人と大型軍艦10隻による招集が基本とされています。
しかし、エッグヘッドに向けられた戦力は、その定義を遥かに超える「戦争」レベルの規模でした。
四皇勢力と天才科学者、そして伝説の種族を同時に相手にするため、海軍は総力を挙げて包囲網を敷いています。
集結した9人の中将と大将黄猿の存在
今回エッグヘッドを取り囲んだのは、大小合わせて100隻もの軍艦と、約3万人にも及ぶ海兵たちです。
その指揮を執るために集められた海軍中将はなんと9人にものぼり、ドール中将やブルーグラス中将、ドーベルマン中将といった精鋭たちが顔を揃えました。
さらに、最高戦力である海軍大将黄猿(ボルサリーノ)が現場で直接戦闘に参加している点が、事態の深刻さを物語っています。
黄猿は社畜として任務を遂行しようとしますが、親友であるベガパンクや弟子の戦桃丸を手にかけなければならない状況に、心中では葛藤を抱えながら戦場に立っていました。
五老星サターン聖の降臨が意味する緊急事態
通常のバスターコールと決定的に異なるのは、世界最高権力者である五老星の一人、サターン聖が現地に出向き、直接指揮を執っている点です。
本来、聖地マリージョアから出るはずのない五老星が前線に現れること自体が、歴史的な異常事態と言えます。
サターン聖の降臨は、海軍だけの戦力では対処しきれないほどの危機感を政府が抱いている証拠であり、絶対に失敗が許されない抹殺任務であることを示していました。
この異例の編成は、エッグヘッドの戦いが単なる海賊討伐ではなく、世界の運命を分ける決戦であることを読者に印象付けました。
過去のオハラ事件との対比とロビンの感情
エッグヘッドへの攻撃命令は、かつて地図から消された考古学の聖地「オハラ」の悲劇を強く想起させます。
「探究の欲に勝てず過去を掘り下げた」として断罪されるベガパンクの姿は、オハラの学者たちと完全に重なるものでした。
この展開は、幼少期にバスターコールの恐怖を体験したロビンにとって、トラウマを呼び起こす悪夢のような状況だったに違いありません。
トラウマの再来に直面する麦わらの一味
バスターコールの警報が鳴り響いた際、麦わらの一味にも緊張が走りました。
特にロビンにとっては、故郷と母を奪われた忌まわしい記憶そのものであり、エッグヘッドの状況はオハラの再来と言えます。
しかし、かつて無力だった少女は今や四皇の仲間となり、理不尽な暴力に対抗する力を手に入れました。
ウソップが「バスターコール何回くらうんだ」と叫ぶシーンがありますが、これは彼らが幾度も絶望的な状況を乗り越えてきた歴戦の海賊であることを逆説的に示しています。
「地図から消す」という政府の非情なやり方
サターン聖の非情さは、島に残る者への攻撃だけでなく、事前に島から脱出した研究員や避難船に対しても追撃命令を出していた点に表れています。
「空白の100年の何かを知った者がいるかもしれない」という疑いだけで、罪のない人々を皆殺しにしようとする姿勢は、オハラで避難船を撃沈した赤犬の思想と同じです。
「悪」の可能性を摘むためなら一般人の犠牲も厭わないという、世界政府の徹底した隠蔽体質が、このバスターコールによって改めて最悪の形で実行されようとしていました。
バスターコール発動後の展開と結末はどうなる?
圧倒的な戦力による破壊が開始されたエッグヘッドですが、その結末は政府の思惑通りには進みませんでした。
島は業火に包まれましたが、そこには計算外の事態が次々と発生し、戦況は混沌を極めていきます。
政府が隠そうとした秘密は、皮肉にもバスターコールの混乱の中で世界中へと拡散されることになりました。
パシフィスタの制御権とくまの行動
戦局を大きく変えたのは、人間兵器パシフィスタの制御権と、自我を失ったはずのバーソロミュー・くまの行動でした。
ベガパンクは密かに、すべてのパシフィスタの最上位権限を五老星ではなく、ボニーに与えるというプログラムを仕込んでいました。
これにより、海軍が持ち込んだ兵器が逆に海軍を襲うという大混乱が発生します。
また、娘ボニーの危機に本能だけで駆けつけたくまの一撃がサターン聖を吹き飛ばすなど、親子の絆が科学や権力を凌駕するドラマチックな展開が繰り広げられました。
最終的な勝敗と世界に与えた衝撃
最終的にエッグヘッドは壊滅的な被害を受けましたが、政府の目的であった「情報の完全な隠蔽」と「主要ターゲットの全滅」は失敗に終わりました。
ベガパンクの死をトリガーとして、全世界に向けて「世界の真実」に関する衝撃的なメッセージ配信が始まってしまったからです。
また、巨人族の海賊団や伝説の鉄の巨人の介入もあり、ルフィたちは包囲網からの脱出を図ります。
バスターコールという最大戦力を行使しながらも、結果として世界政府は、自らのタブーを世界中に晒すという致命的な失態を演じることになったのです。
まとめ
エッグヘッドへのバスターコールは、空白の100年やニカの存在を消し去りたい五老星サターン聖の焦りと、世界政府の冷徹さを象徴する出来事でした。
9人の中将や大将黄猿、そして100隻の軍艦という異例の戦力が投入され、かつてのオハラを超える規模での破壊が実行されました。
しかし、ベガパンクの命を賭した策や、くまとボニーの絆、そしてルフィたちの抵抗により、政府の目論見は崩れ去ります。
破壊の限りを尽くしたバスターコールの果てに残ったのは、政府への恐怖ではなく、隠されていた世界の秘密が暴かれるという新たな時代の幕開けでした。

