アガサクリスティを読む順番は?初心者から全作網羅まで解説

「ミステリーの女王」アガサ・クリスティ。

その名前は知っていても、100を超える膨大な作品数の前に「どれから読めばいいの?」と迷ってしまう方は少なくないでしょう。

この記事では、アガサ・クリスティ作品を初めて手に取る初心者の方から、全巻読破を目指す熱心なファンの方まで、あらゆる層に向けた「読む順番」の最適なルートを提案します。

人気投票で選ばれた最高傑作や、映画化された有名な作品、さらには通好みの隠れた名作まで、あなたの好みに合った一冊が必ず見つかるはずです。

ハヤカワ文庫を中心とした作品一覧も掲載していますので、次の一冊を選ぶためのガイドとして、ぜひ最後までご覧ください。

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目次

アガサクリスティを読む順番は?傑作から初心者向けまで

アガサクリスティのおすすめは?まず初心者はこの5冊

アガサ・クリスティの作品は、基本的に一話完結のため、どの作品から読み始めても楽しめるのが大きな魅力です。

しかし、膨大な作品の中から最初の一冊を選ぶのは、やはり難しいもの。

そこで、ミステリーファン歴20年の私が、初心者の方でもクリスティの面白さを存分に味わえる、鉄板の5作品を厳選しました。

これらの作品は、独立性が高く、ストーリーが非常に分かりやすいため、挫折することなく読み進められるでしょう。

なぜこれらの作品が初心者におすすめなのか、その理由と共にご紹介します。

作品名初心者へのおすすめ理由
そして誰もいなくなったシリーズに属さない独立した作品。ミステリ史上最も有名な衝撃の結末。
オリエント急行の殺人ポワロ作品で最も有名。豪華な舞台設定と意外な犯人の動機が魅力。
アクロイド殺しポワロ初期の傑作。ミステリの常識を覆した伝説的なトリック。
ABC殺人事件ポワロと犯人の知恵比べがスリリング。テンポが良く読みやすい。
スタイルズ荘の怪事件名探偵ポワロの記念すべきデビュー作。シリーズの始まりを知ることができる。

なぜこの5冊から始めるべきなのか

まず、『そして誰もいなくなった』は、孤島に集められた10人が童謡の歌詞通りに次々と殺されていくという、サスペンスとホラーの要素が詰まった傑作です。

探偵役が登場しないため、純粋に謎解きと人間ドラマに集中でき、クリスティのすごみを最初に体感するには最適な一冊といえます。

次に『オリエント急行の殺人』は、名探偵ポワロが登場する作品の中でも特に有名で、豪華寝台列車という閉ざされた空間で起こる殺人事件を描いています。

映画化もされており、多くの人があらすじを知っているかもしれませんが、活字で読むことでポワロの灰色の脳細胞の働きをより深く追体験できるのです。

そして『アクロイド殺し』は、ミステリ史にその名を刻む、あまりにも有名なトリックで知られています。

ただ、このトリックは非常に画期的であるため、最初に読んでしまうと他の作品の驚きが薄れてしまう可能性も否定できません。

ミステリの「お約束」をいくつか知ってから読むと、その衝撃は倍増するでしょう。

『ABC殺人事件』は、アルファベット順に無関係な人々が殺されていく連続殺人事件にポワロが挑みます。

犯人からの挑戦状という形式で物語が進むため、非常にスリリングでページをめくる手が止まらなくなるはずです。

最後に『スタイルズ荘の怪事件』は、ポワロが初めて登場する記念碑的な作品です。

ここから彼の長いキャリアが始まるため、シリーズを追いかけたいと考えている方にとっては、まさに原点となる一冊になります。

これらの5冊は、それぞれ異なる魅力を持っており、あなたのミステリへの好奇心を大いに刺激してくれることでしょう。

名探偵ポワロの最高傑作と読むべき順番

アガサ・クリスティが生んだ最も有名な探偵、エルキュール・ポワロ。

そのシリーズは長編だけで33作にも及び、どれから手をつければ良いか悩むのも当然です。

ポワロの最高傑作は人によって意見が分かれますが、一般的には『アクロイド殺し』や『オリエント急行の殺人』、『ナイルに死す』などが挙げられることが多いです。

しかし、これらの傑作をただ読むだけでなく、「読む順番」を意識することで、ポワロというキャラクターの魅力や、クリスティの作風の変遷をより深く楽しむことができます。

ここでは、ポワロシリーズを味わい尽くすための3つの「読む順番」のパターンを提案します。

パターン1:発表順にポワロの人生を追体験する

最もオーソドックスな読み方は、デビュー作『スタイルズ荘の怪事件』(1920年)から、最後の事件『カーテン』(1975年)までを発表された順番に読んでいく方法です。

この読み方の最大のメリットは、第一次世界大戦でベルギーから亡命してきた若きポワロが、数々の難事件を経て名探偵としての名声を確立し、そして晩年を迎えるまで、彼の人生を共に歩むように追体験できる点にあります。

友人ヘイスティングズとの友情の始まりや、ロンドン警視庁のジャップ警部との関係性の変化など、長期シリーズならではの楽しみを味わえるでしょう。

ただし、初期の作品は後の傑作群に比べると、やや荒削りな部分があるかもしれません。

パターン2:黄金期(1930年代)の傑作から堪能する

ポワロシリーズが最も輝いていたのは、1930年代と言われています。

この時期には、『アクロイド殺し』( যদিও এটি 1926 সালে প্রকাশিত হয়েছিল)、『オリエント急行の殺人』、『ABC殺人事件』、『ナイルに死す』、『メソポタミヤの殺人』など、現在でも最高傑作と名高い作品が次々と生み出されました。

もしあなたが「とにかく面白いポワロが読みたい」のであれば、この黄金期の作品からランダムに手に取っていくのがおすすめです。

クリスティのトリックが最も冴えわたり、ポワロのキャラクターも確立されたこの時期の作品群は、どれを読んでも外れがありません。

ここからポワロの魅力にハマり、その後でデビュー作に戻ったり、後期の作品に進んだりするのも良いでしょう。

パターン3:好みのシチュエーションで選ぶ

ポワロシリーズは、その舞台設定も多彩です。

あなたの好みに合わせて、読む作品を選ぶという楽しみ方もあります。

例えば、旅情あふれるエキゾチックなミステリーが好きなら、『オリエント急行の殺人』や『ナイルに死す』、『メソポタミヤの殺人』などがおすすめです。

逆に、イギリスの田舎の邸宅で起こるような、閉鎖された空間での人間ドラマが好きなら、『スタイルズ荘の怪事件』や『アクロイド殺し』、『杉の柩』などが向いています。

このように、シチュエーションで選ぶことで、より物語の世界に没入しやすくなります。

どの順番で読むにしても、ポワロの「灰色の脳細胞」が導き出す見事な解決を、ぜひ楽しんでください。

アガサ・クリスティの最高傑作は?人気投票の結果発表

「アガサ・クリスティの最高傑作は何か?」という問いは、ファンの間で長年議論され続ける永遠のテーマです。

個人の好みによって評価は分かれますが、多くの読者がどの作品を支持しているのかを知ることは、次の一冊を選ぶ上で非常に参考になります。

ここでは、早川書房がクリスティー文庫創刊100周年を記念して実施した人気投票の結果をもとに、ファンが選んだ本当の最高傑作を見ていきましょう。

この結果を見れば、なぜクリスティが今なお愛され続けるのか、その理由の一端が見えてくるはずです。

クリスティー文庫人気投票ベスト10

順位作品名シリーズ
1位そして誰もいなくなったノンシリーズ
2位オリエント急行の殺人ポワロ
3位アクロイド殺しポワロ
4位ナイルに死すポワロ
5位ABC殺人事件ポワロ
6位春にして君を離れウェストマコット
7位パディントン発4時50分マープル
8位予告殺人マープル
9位鏡は横にひび割れてマープル
10位スタイルズ荘の怪事件ポワロ

なぜこれらの作品は最高傑作と評されるのか

堂々の1位に輝いたのは、やはり『そして誰もいなくなった』でした。

この作品の魅力は、なんといってもその完璧なプロットと、読者の予想を根底から覆す衝撃的な結末にあります。

孤島という閉鎖空間で一人、また一人と人が消えていく恐怖は、他のミステリーでは味わえません。

探偵役がいないことで、読者自身が謎を解き明かさなければならないという没入感も、高く評価されている理由です。

2位の『オリエント急行の殺人』は、豪華な舞台設定と魅力的な登場人物、そして何よりも犯人の動機に隠された深い悲しみが、多くの読者の心を打ちました。

ポワロが下す最後の決断は、単なる謎解きに留まらない、人間ドラマとしての深みを感じさせます。

3位の『アクロイド殺し』は、ミステリーの歴史を変えたと言われる叙述トリックで有名です。

この作品が発表された当時、「これはフェアかアンフェアか」という大論争を巻き起こしました。

読者が完全に信頼していた語り手によって欺かれるという体験は、一度味わうと忘れられない強烈なインパクトを残します。

これらのトップ3に共通するのは、単にトリックが奇抜なだけでなく、物語の根底に人間の業や悲しみ、愛情といった普遍的なテーマが流れている点です。

だからこそ、時代を超えて多くの人々の心を掴み、最高傑作として語り継がれているのでしょう。

原作ファンも必見!アガサクリスティの映画とドラマ

アガサ・クリスティの魅力は、活字の世界だけにとどまりません。

その巧みなストーリーテリングと魅力的なキャラクターは、これまで数えきれないほど映画やドラマとして映像化されてきました。

原作を読んだ後で映像作品を観るもよし、映像作品からクリスティの世界に入るもよし。

ここでは、特に近年話題となった映像化作品を中心に、原作ファンも必見の作品をご紹介します。

映像ならではの解釈や、原作との違いを楽しむのも一興です。

ケネス・ブラナー監督・主演の豪華映画シリーズ

近年、クリスティの映像化で最も注目を集めているのが、ケネス・ブラナーが監督と主演のポワロ役を務める映画シリーズです。

『オリエント急行殺人事件』(2017年)や『ナイル殺人事件』(2022年)は、オールスターキャストと現代的な映像技術を駆使し、豪華絢爛なクリスティの世界をスクリーンに蘇らせました。

物語の骨子は原作に忠実でありながら、登場人物の背景に新たな解釈を加えたり、アクションシーンを盛り込んだりと、現代の観客が楽しめるような工夫が凝らされています。

原作の雰囲気を大切にしつつも、新しいポワロ像を提示した意欲作と言えるでしょう。

決定版!デヴィッド・スーシェ主演『名探偵ポワロ』

「ポワロといえばこの人」と、多くのファンが絶賛するのが、イギリスの俳優デヴィッド・スーシェが主演したテレビドラマシリーズ『名探偵ポワロ』です。

1989年から2013年にかけて、ポワロが登場する長編・短編のほぼ全てを映像化するという、まさに偉業ともいえるシリーズ。

スーシェは、クリスティが描写したポワロの外見、話し方、仕草、そして潔癖症な性格までを完璧に研究し、体現しました。

原作から抜け出してきたかのようなその姿は、多くのファンにとっての「理想のポワロ」となっています。

原作の世界観をじっくりと味わいたいなら、このシリーズは必見です。

ダークでシリアスなBBC制作ドラマシリーズ

近年、イギリスのBBCが制作しているドラマシリーズは、これまでのクリスティの映像化とは一線を画す、ダークでシリアスな作風が特徴です。

サラ・フェルプス脚本による『そして誰もいなくなった』(2015年)や『ABC殺人事件』(2018年)などは、原作の持つ恐怖や登場人物の心理的な闇を深く掘り下げています。

特に『そして誰もいなくなった』は、原作の救いのない結末を忠実に描き、その徹底した絶望感が大きな話題を呼びました。

明るく華やかなイメージとは違う、クリスティ作品の持つ冷徹な一面に触れたい方におすすめです。

舞台を日本に!三谷幸喜脚本シリーズ

日本でも、クリスティ作品は翻案という形で映像化されています。

中でも脚本家・三谷幸喜によるシリーズは、その大胆なアレンジで注目されました。

『オリエント急行殺人事件』(2015年)、『黒井戸殺し』(2018年、原作は『アクロイド殺し』)、『死との約束』(2021年)の3作品は、舞台を昭和初期の日本に移し、ポワロにあたる名探偵・勝呂武尊を野村萬斎が演じています。

原作の骨格はそのままに、日本の文化や時代背景を巧みに取り入れた翻案は見事です。

原作を知るファンであればあるほど、そのアレンジの妙を楽しめるでしょう。

意外と難しい?上級者向けのアガサクリスティ作品

アガサ・クリスティの作品は、初心者にも読みやすいものが多い一方で、中には一筋縄ではいかない「難しい」あるいは「人を選ぶ」作品も存在します。

これらの作品は、一般的なミステリーの枠にはまらなかったり、クリスティ自身の試行錯誤が色濃く出ていたりするため、彼女の作品をある程度読み込んだ上級者向けの作品と言えるかもしれません。

もしあなたが「定番は読み尽くした」と感じているなら、次なる挑戦としてこれらの異色作に手を伸ばしてみてはいかがでしょうか。

クリスティの懐の深さを、改めて感じることができるはずです。

異色のスパイ活劇『ビッグ4』

ポワロシリーズの中でも、ひときわ異彩を放っているのがこの『ビッグ4』です。

いつものような閉鎖空間での殺人事件ではなく、世界征服を企む国際的な悪の組織「ビッグ4」にポワ-ロが立ち向かうという、スパイ小説や冒険活劇のようなテイストが強い作品。

緻密な推理よりもアクションシーンが多く、ポワロが変装したり、爆発から逃れたりと、いつもの彼からは想像もつかない活躍(?)を見せます。

この作品は、もともと短編として発表されたものを、後から長編としてつなぎ合わせたという経緯があり、プロットにやや強引さが感じられるのも事実です。

「ポワロの推理劇」を期待して読むと肩透かしを食う可能性が高いため、あくまで「ポワロが登場する異色のスリラー」として楽しむのが良いでしょう。

スリラー要素の強い『フランクフルトへの乗客』

クリスティが後期に執筆したこの作品は、ノンシリーズのスパイ・スリラーです。

空港で偶然出会った女性から「あなたの命が狙われている」と告げられた外交官が、やがて世界規模の陰謀に巻き込まれていくというストーリー。

謎解きよりもサスペンスや国際的な陰謀が中心となっており、登場人物も多く、話が複雑に入り組んでいるため、一度読んだだけでは全体像を掴むのが難しいかもしれません。

クリスティが冷戦時代の世相を反映させて書いた意欲作ですが、ミステリーとしてのカタルシスを求める読者からは、評価が分かれる傾向にあります。

クリスティのポリティカル・スリラーとしての側面を知りたい上級者向けの作品です。

ミステリではない傑作『春にして君を離れ』

これはミステリーではありません。

クリスティが「メアリ・ウェストマコット」という別名義で発表した、6つの恋愛小説のうちの1つです。

夫の赴任先であるバグダッドからイギリスへ帰る途中、砂漠の安宿で足止めを食らった主人公の女性が、これまでの自分の人生を振り返る中で、完璧だと思っていた家族との関係や自分自身の本性に気づいていく、という心理ドラマ。

ここには殺人事件も名探偵も登場しませんが、人間のエゴや偽善を鋭く暴き出す筆致は、まさにクリスティそのものです。

多くのファンが「ミステリー以外の最高傑作」として挙げる作品であり、彼女の人間観察の鋭さに改めて驚かされるでしょう。

「ミステリー作家」という枠を超えた、クリスティの才能を知る上で欠かせない一冊です。

アガサクリスティ全作を読む順番は?文庫本情報と網羅リスト

ハヤカワ文庫のアガサクリスティ作品一覧

現在、日本でアガサ・クリスティの作品を最も手軽に、そして網羅的に読むことができるのは、早川書房から刊行されている「クリスティー文庫」です。

このシリーズは、クリスティの全著作を収録するプロジェクトとして2003年から刊行が始まり、現在ではほぼすべての作品を読むことができます。

もしあなたがクリスティ作品をこれから読み始めようとしているのなら、まずはこの「クリスティー文庫」から選ぶのが最も確実な方法と言えるでしょう。

ここでは、クリスティー文庫の特徴について詳しく解説します。

新訳で読みやすい「クリスティー文庫」

クリスティー文庫の最大の特長は、多くの作品が現代的な言葉遣いによる「新訳」で刊行されている点です。

クリスティの作品は、古いものでは1920年代に書かれているため、旧版の翻訳では言葉遣いが古風で、現代の読者には少し読みにくく感じられることがありました。

しかし、新訳版では、原作の格調高い雰囲気はそのままに、より自然でスムーズな日本語に翻訳されています。

これにより、初心者の方でもストレスなく物語の世界に没入することができるのです。

また、固有名詞の表記なども、より原音に近いものに統一されているため、海外の文化に馴染みのない読者にも親切な作りになっています。

デザイン性の高い装丁

クリスティー文庫は、その装丁の美しさでも知られています。

多くの作品で、統一感のある洗練されたカバーデザインが採用されており、本棚に並べたときの見栄えも非常に良いです。

作品ごとにテーマカラーが設定されていることも多く、コレクションする楽しみもあります。

判型は、一般的な文庫本よりも少し背の高い「トールサイズ」が採用されており、手に持った時の感触も心地よいです。

お気に入りの作品を、美しい装丁で手元に置いておきたいというファン心理を見事に満たしてくれるシリーズと言えるでしょう。

旧版との違いは?

早川書房は、クリスティー文庫が刊行される以前から、ハヤカワ・ミステリ文庫(HM文庫)としてクリスティ作品を刊行していました。

古書店などでは、こちらの旧版を見かけることも多いでしょう。

旧版は、趣のある翻訳やカバーイラストに愛着を持つファンもいますが、前述の通り、言葉遣いの古さや、現在では使われない表現などが含まれることもあります。

どちらを選ぶかは個人の好みですが、これから初めて読むのであれば、読みやすさを重視して新訳の「クリスティー文庫」を選ぶことをおすすめします。

アガサクリスティの文庫本を全巻揃えるには?

アガサ・クリスティの魅力に深くはまり、「すべての作品を読んでみたい」「文庫本を全巻揃えたい」と考えるようになるファンは少なくありません。

長編・短編集を合わせると100冊近くになる壮大なコレクションですが、計画的に集めることで、その夢を実現することは十分に可能です。

ここでは、クリスティの文庫本を全巻揃えるための具体的な方法と、その際の注意点について解説します。

新品で揃えるなら「クリスティー文庫」一択

現在、新品で全巻を揃えることを目指すなら、早川書房の「クリスティー文庫」をターゲットにするのが最も現実的です。

このシリーズは現在も刊行が続いており、主要な書店やオンラインストアで容易に入手することができます。

全巻を一度に購入するのは難しいかもしれませんが、毎月数冊ずつ購入するなど、自分なりのペースで集めていくのが良いでしょう。

早川書房の公式サイトには、クリスティー文庫の全点リストが掲載されていますので、チェックリストとして活用しながら集めていくと、達成感もひとしおです。

刊行順に揃えていく、あるいはポワロシリーズ、マープルシリーズといったように、シリーズごとにコンプリートしていくなど、自分なりのルールを決めて集めるのも楽しいでしょう。

古書で探すという選択肢

予算を抑えたい場合や、旧版の翻訳や装丁に魅力を感じる場合は、古書店やオンラインのマーケットプレイスを活用して集める方法もあります。

この場合、早川書房の旧版(ハヤカワ・ミステリ文庫)や、東京創元社から刊行されている創元推理文庫版も選択肢に入ってきます。

特に創元推理文庫版は、深町眞理子氏による名訳で知られる作品も多く、こだわりのファンからの人気も高いです。

ただし、古書で揃える際にはいくつかの注意点があります。

まず、すべての作品が簡単に見つかるとは限りません。

人気作品や発行部数の少ない作品は、入手が困難な場合があります。

また、本の状態(日焼け、シミ、書き込みなど)も様々ですので、購入前によく確認することが重要です。

根気と時間はかかりますが、一冊一冊探し出してコレクションを完成させていく過程は、宝探しのような楽しさがあるかもしれません。

全巻セットは存在する?

時折、オンラインストアや古書店で「アガサ・クリスティ文庫 全巻セット」といった商品が見られることがあります。

これは非常に魅力的ですが、購入前にはその内容をよく確認する必要があります。

「全巻」と謳っていても、実際には主要な作品のみのセットであったり、新旧の文庫が混在していたりすることがあります。

自分がどのシリーズの、どのバージョンを揃えたいのかを明確にした上で、セットの内容が自分の希望と合致しているかを見極めることが大切です。

通好み!アガサクリスティの隠れた名作5選

『そして誰もいなくなった』や『オリエント急行の殺人』といった超有名作の影に隠れてはいますが、アガサ・クリスティの作品群には、ミステリーファンを唸らせる「隠れた名作」が数多く存在します。

これらの作品は、派手なトリックや舞台設定こそないかもしれませんが、人間の心理を深くえぐるような描写や、じわじわと恐怖が迫りくるような巧みなストーリーテリングが光る逸品ばかりです。

ここでは、クリスティを読み込んだ「通」なファンにこそ読んでほしい、選りすぐりの5作品をご紹介します。

『杉の柩』:法廷ミステリの傑作

ポワロシリーズの中でも、特にプロットの完成度が高いと評価されているのがこの作品です。

物語は、ある富豪の女性が亡くなるところから始まります。

彼女の死は自然死として処理されますが、その後、遺言状をめぐって殺人事件が発生。

事件の容疑者として逮捕された女性の弁護士から依頼を受けたポワロが、法廷で無実を証明するために奔走します。

この作品の魅力は、緻密に張り巡らされた伏線と、二転三転する裁判の行方です。

ポワロが法廷という舞台でいかにして真実を明らかにするのか、その過程は非常にスリリング。

人間関係の機微を丁寧に描き出した、重厚なミステリーです。

『死との約束』:心理描写の巧みさが光る

中東のペトラ遺跡を舞台にしたポワロ作品。

裕福でありながら、家族を精神的に支配する独裁的な母親が殺害されます。

容疑者は、彼女に虐げられてきた家族全員。

この作品には派手な物理的トリックはありませんが、登場人物一人ひとりの心理描写が非常に巧みで、誰が犯人でもおかしくないという緊張感が最後まで持続します。

ポワロが、限られた時間内のアリバイ証言の矛盾を突き、犯人を追い詰めていく過程は見事です。

人間の心の闇に迫る、クリスティの真骨頂ともいえる一作。

『終りなき夜に生れつく』:ゴシックホラーの趣

これはクリスティのノンシリーズ作品の中でも、特に異色の傑作として名高い一冊です。

「呪われた土地」と呼ばれる美しい土地に家を建てた若い夫婦。

幸せな生活が始まるはずだった彼らを、次々と不幸が襲います。

物語は、ミステリーというよりも、不穏な空気が漂うゴシックホラーのような雰囲気で進んでいきます。

そして、最後に待ち受ける結末は、クリスティ作品の中でも屈指の衝撃度とやるせなさを誇ります。

この作品を「最高傑作」に推すファンも少なくありません。

読後、しばらく呆然としてしまうこと請け合いです。

『もの言えぬ証人』:犬が事件の鍵を握る

ある老婦人が自宅の階段から転落して死亡します。

事故死かと思われましたが、彼女が飼っていたフォックステリア犬の奇妙な行動から、ポワロは殺人の可能性を疑います。

タイトルの通り、「もの言えぬ証人」である犬が、事件を解くための重要な鍵を握るというユニークな設定が魅力です。

ポワロと友人ヘイスティングズの軽妙なやり取りも健在で、シリーズの中でも心温まる作品の一つ。

動物好きの方にもおすすめしたい、心優しいミステリーです。

『パディントン発4時50分』:マープルの友人が大活躍

ミス・マープルシリーズの中でも、特に人気の高い作品です。

列車に乗っていたマープルの友人が、並走する別の列車内で男が女性の首を絞めているのを目撃します。

しかし、死体はどこからも発見されません。

友人から相談を受けたマープルが、少ない手がかりから事件の真相に迫っていきます。

この作品の面白さは、マープル自身が積極的に動き回るのではなく、優秀な家政婦であるルーシー・アイルズバロウを屋敷に潜入させ、情報を集めてもらうという点にあります。

安楽椅子探偵であるマープルの推理と、行動派のルーシーの活躍が見事に融合した、エンターテインメント性の高い傑作です。

アガサクリスティの文庫本・作品を網羅した一覧リスト

アガサ・クリスティが遺した膨大な作品群を前に、次にどれを読もうか迷ってしまうのは当然のことです。

ここでは、あなたの本選びの助けとなるように、主要な作品をシリーズ別に整理したリストを作成しました。

このリストを参考に、あなたがまだ読んでいないシリーズに挑戦したり、お気に入りの探偵の別の活躍を追ったりしてみてください。

なお、リストは早川書房の「クリスティー文庫」を基準にしています。

エルキュール・ポワロ シリーズ(長編)

ベルギー人の元警察官で、自慢の「灰色の脳細胞」を駆使して難事件を解決する名探偵。クリスティ作品で最も登場回数の多い、代表的キャラクターです。

作品名刊行年概要
スタイルズ荘の怪事件1920ポワロの記念すべきデビュー作。
アクロイド殺し1926ミステリ史に残る叙述トリックの傑作。
オリエント急行の殺人1934豪華寝台列車を舞台にした最も有名な作品。
ABC殺人事件1936犯人からの挑戦状。スリリングな展開が魅力。
ナイルに死す1937エジプトの豪華客船で起こる愛憎劇。
五匹の子豚194216年前に遡って事件の真相を探る回想形式ミステリ。
カーテン1975ポワロ最後の事件。シリーズの終着点。

ミス・マープル シリーズ(長編)

イギリスの田舎町セント・メアリ・ミードに住む、詮索好きで人間観察に優れた老婦人。村の噂話や過去の出来事から、事件の真相を見抜きます。

作品名刊行年概要
牧師館の殺人1930ミス・マープルの長編デビュー作。
書斎の死体1942ある朝、書斎に見知らぬ女性の死体が。
予告殺人1950新聞の広告欄に殺人が予告される。
パディントン発4時50分1957列車内で目撃された殺人事件の謎を追う。
鏡は横にひび割れて1962映画女優をめぐる悲劇。マープルの人間愛が光る。
スリーピング・マーダー1976マープル最後の事件(執筆は1940年代)。

トミーとタペンス シリーズ

おしどり夫婦のトミー・ベレスフォードとタペンス・カウリーが、スパイ活動や冒険に巻き込まれていくシリーズ。他のシリーズとは一味違う、軽快な冒険活劇が楽しめます。

作品名刊行年概要
秘密機関1922若き二人がスパイ組織に立ち向かう。
NかMか1941第二次大戦下、中年になった二人が再びスパイ活動へ。
親指のうずき1968老境に入った二人が絵に隠された謎を追う。

ノンシリーズ(代表作)

特定の探偵が登場しない、独立した作品群。クリスティの多彩な才能が発揮された傑作が数多く含まれています。

作品名刊行年概要
そして誰もいなくなった1939ミステリ史上最も有名な傑作。完璧なプロット。
終りなき夜に生れつく1967ゴシックホラーの雰囲気が漂う、衝撃のサスペンス。
無実はさいなむ1958死刑になった男の無実を証明しようとする家族のドラマ。

まとめ:あなたに合うアガサクリスティの読む順番を見つけよう

  • アガサ・クリスティ作品は基本的にどれから読んでも楽しめる
  • 初心者は『そして誰もいなくなった』など独立した有名作から入るのがおすすめである
  • ポワロシリーズは発表順、黄金期、テーマ別など複数の読み方が存在する
  • ファン人気投票では『そして誰もいなくなった』が最高傑作に選ばれている
  • 原作の映像化作品は、現代的な解釈や独自の演出が加えられ新たな魅力がある
  • 全ての作品が初心者向けではなく、スリラー要素の強い上級者向けの作品も存在する
  • 現在、文庫本を揃えるなら新訳で読みやすい早川書房の「クリスティー文庫」が主流である
  • 有名作以外にも『杉の柩』など通好みの「隠れた名作」が多数存在する
  • 作品数が多いため、シリーズ別のリストを参考に次の一冊を選ぶのが効率的である
  • ミステリ以外の作品として、別名義で書かれた『春にして君を離れ』も評価が高い
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