『呪術廻戦』で圧倒的な強さを誇る「呪いの王」両面宿儺。
その多彩な技の中でも、特に謎に包まれているのが炎の術式「フーガ」です。
渋谷事変で突如として見せた絶大な火力は、多くの読者に衝撃を与えました。
しかし、なぜ宿儺はこの強力な技を多用しないのでしょうか。
そもそも「フーガ」の正体は何なのか、どのような条件で使えるのか、疑問は尽きません。
この記事では、宿儺の術式「フーガ」とは何かという基本的な解説から、なぜ使えるのか、使わない理由、そして元ネタである実在の伝承に至るまで、あらゆる角度から徹底的に考察し、まとめていきます。
呪いの王が使う宿儺のフーガとは?基本を解説
まずは基本から!宿儺のフーガを解説
宿儺が使う「フーガ」とは、一言で表すと絶大な火力を誇る炎の術式です。
作中でこの技が初めて披露されたのは、多くのキャラクターの運命が交錯した「渋谷事変」でのことでした。
具体的には、特級呪霊である漏瑚(じょうご)との戦闘中に、宿儺は「火力勝負」と称してこの技を繰り出します。
その際、「■」という黒い箱のような紋様とともに、「開(フーガ)」と詠唱することで、巨大な炎の矢を放ちました。
炎を操ることに絶対的な自信を持っていた漏瑚でさえ、宿儺の炎を見て「格が違う」と驚愕し、為すすべなく焼き尽くされてしまいます。
この描写から、「フーガ」が単なる炎の術式ではなく、他の術師や呪霊が操る炎とは比較にならないほどの威力と規模を持つことがわかります。
また、最近の連載では、この技を使う際に「竈(カミノ)」という言葉も登場しており、「フーガ」の能力や正体に関する謎をさらに深めています。
この「竈」という言葉が詠唱の一部なのか、あるいは術式そのものに関連するキーワードなのかは、ファンの間で様々な考察が飛び交っている状況です。
いずれにしても、「フーガ」は宿儺の圧倒的な戦闘能力を象徴する技の一つであり、その正体と能力の全貌は、物語の核心に迫る重要な要素と言えるでしょう。
宿儺の技一覧とフーガの位置づけ
宿儺は「呪いの王」の名に恥じない、多彩かつ強力無比な技を複数有しています。
その中で「フーガ」がどのような位置づけにあるのかを理解するためには、まず彼の能力の全体像を把握することが重要です。
宿儺の持つ主な技を以下の表にまとめました。
技の名称 | 能力の概要 | 主な使用場面 |
解(かい) | 対象の呪力量に応じて威力が変動する斬撃。呪力のない物体にも有効。 | 広範囲の対象をまとめて切り刻む。 |
捌(はち) | 対象の呪力や強度を見極め、一太刀で両断する斬撃。 | 主に呪力を持つ術師や呪霊との戦闘。 |
領域展開「伏魔御厨子」 | 必中効果範囲内のあらゆるものを斬撃で切り刻み続ける神業の領域。 | 渋谷での大量虐殺、五条悟との最終決戦。 |
反転術式 | 負の呪力を掛け合わせ、正のエネルギーを生み出す治癒能力。 | 肉体の欠損や致命傷からの再生。 |
領域展延(りょういきてんえん) | 自身の領域を生得領域に包み、中和する高等技術。 | 領域対策、五条悟の無下限呪術を突破。 |
世界を断つ斬撃 | 空間そのものを断ち切り、あらゆる防御を無効化する究極の斬撃。 | 五条悟へのとどめの一撃。 |
開(フーガ) | 絶大な火力を誇る炎の術式。 | 漏瑚、魔虚羅との戦闘。 |
このように、宿儺の技の多くは「斬撃」に特化しています。
「解」と「捌」を基本とし、その極致が領域展開「伏魔御厨子」や「世界を断つ斬撃」です。
一方で「フーガ」は、この斬撃系統とは全く異なる「炎」という性質を持っています。
この特異性から、「フーガ」は宿儺の持つ技の中でも、明らかに「奥の手」や「切り札」といった特殊な位置づけにあると考えられます。
普段は斬撃のみで相手を圧倒し、それだけでは通用しない、あるいは特別な意図がある場合にのみ使用される限定的な技だと言えるでしょう。
使用頻度の低さも、その特別性を裏付けています。
宿儺の術式「フーガ」の正体とは?
宿儺の術式「フーガ」の正体については、作中で明確な説明がなされていないため、ファンの間では大きく分けて二つの説が有力視されています。
これらの考察は、宿儺というキャラクターの根幹に関わる重要なテーマです。
考察①:二つ目の生得術式説
一つ目は、宿儺が斬撃の術式「御厨子(みづし)」とは別に、二つ目の生得術式として「フーガ」を所有しているという説です。
通常、呪術師は生まれながらに持つ術式は一つだけです。
しかし、宿儺は非常に特殊な存在であり、その出自に秘密があるとされています。
作中では、宿儺がかつて不要な存在であった双子の片割れであったことが示唆されており、母胎内でその片割れを喰らったのではないか、という考察があります。
もしこの考察が正しければ、片割れの肉体と魂を取り込んだことで、その術式も受け継ぎ、結果として二つの術式を持つに至ったのかもしれません。
作者である芥見下々先生が過去のインタビューで「宿儺は複数の術式を持っている」という趣旨の発言をしたことも、この説の信憑性を高めています。
考察②:「御厨子」の拡張機能説
もう一つの有力な説は、「フーガ」が独立した術式ではなく、宿儺の本来の術式である「御厨子」に含まれる拡張機能の一つだという考え方です。
「御厨子」とは、元々「神や貴人の食事を調える台所」を意味する言葉です。
この言葉の意味から、宿儺の術式全体が「調理」をテーマにしているのではないかと考察されています。
この説に基づくと、「解」や「捌」が食材を「切り刻む・おろす」工程に相当し、「フーガ」はそれを「竈(カミノ)」の炎で「焼く」工程に当たる、というわけです。
実際に、宿儺の領域展開「伏魔御厨子」も、その名の通り厨房を連想させます。
この説であれば、術師が持つ術式は一つという原則にも反しません。
斬撃と炎という全く異なる現象を一つの術式で扱える理由にもなり、非常に説得力のある考察だと言えるでしょう。
フーガの発動に宿儺が課す条件とは
これほど強力な「フーガ」ですが、宿儺がいつでも自由に使っている様子は見られません。
このことから、その発動には何らかの条件や「縛り」が存在する可能性が高いと考えられています。
考えられる条件はいくつか存在します。
一つは、術式の「順序性」です。
前述の「御厨子=調理説」と関連しますが、「解」や「捌」で対象を切り刻むという工程を経なければ、「焼く」工程である「フーガ」は使えないのではないか、という考察です。
料理において、下処理なしにいきなり火にかけることがないように、術式の発動にも手順が定められているのかもしれません。
二つ目の可能性として、単純に呪力消費が非常に激しいという点が挙げられます。
あれだけの規模の炎を生成・制御するには、莫大な呪力が必要となるでしょう。
宿儺は底なしとも思える呪力量を誇りますが、それでも無尽蔵ではありません。
特に五条悟のような強敵との連戦では、呪力の管理が勝敗を分ける重要な要素となります。
そのため、燃費の悪い「フーガ」の使用は、ここぞという場面に限定している可能性があります。
最後に、「開(フーガ)」という詠唱そのものにヒントがあるという説も興味深いです。
「開く」という言葉は、何かを解放する、あるいは自身の何かを開示するという意味合いを持ちます。
これは、自身の術式の一部や秘密を相手に見せる(開示する)という「縛り」を自らに課すことで、技の威力を向上させているのかもしれません。
術式開示は呪術戦の基本であり、宿儺ほどの術師であれば、より高度な形でこの原則を利用していることも考えられます。
宿儺のフーガとは何か?謎と考察を深掘り
そもそも宿儺はフーガをなぜ使えるのか
宿儺が斬撃とは全く性質の異なる炎の術式「フーガ」を使える根源的な理由。
それは、彼の特異な出自と肉体の秘密にあると考察するのが最も有力です。
呪術界の原則として、一人の術師が生まれながらに持つ生得術式は一つだけとされています。
この原則に立てば、宿儺が「御厨子」と「フーガ」という二つの系統の術式を使えること自体が異常です。
この謎を解く鍵は、やはり彼が「結合双生児」であったという説に繋がります。
作中では、宿儺が「忌み子」として扱われていた過去が示唆されています。
平安時代、双子は不吉とされる風潮があり、特に身体が繋がった結合双生児は、より強い禁忌の対象とされていた可能性があります。
この説では、宿儺は母胎内で、あるいは生後間もなく、もう一人の片割れを吸収、あるいは捕食したとされています。
グロテスクな話ではありますが、呪術の世界では魂と肉体は密接に関連しており、他者の肉体を取り込むことで、その魂や能力までをも奪うことができるのかもしれません。
もし片割れが炎を操る術式を持って生まれていたとしたら、宿儺は彼を取り込むことで、その術式を自身のものとして使えるようになったと考えられます。
これが、宿儺が「フーガ」を使える理由ではないでしょうか。
この出自こそが、彼を単なる強力な術師ではなく、千年の時を超えて語り継がれる「呪いの王」たらしめている根源的な要因なのです。
他の術師とは一線を画す、ルールから逸脱した存在。
その証明の一つが、複数の術式を操るという特異な能力だと言えるでしょう。
奥の手?宿儺がフーガを使わない理由
渋谷事変で鮮烈なデビューを飾った「フーガ」ですが、その後の戦闘、特に五条悟との頂上決戦では一度も使用されませんでした。
あれほどの強力な技をなぜ使わないのか。
これには、いくつかの戦術的な理由や状況による制約が考えられます。
第一に、ほとんどの相手に対しては「フーガ」を使うまでもない、という理由が挙げられます。
宿儺の基本術式である「解」と「捌」は、それだけで特級呪霊や熟練の術師を圧倒するほどの威力と精度を誇ります。
常に戦局を優位に進め、相手を見下すかのような余裕の態度を崩さない宿儺にとって、大半の戦闘は斬撃だけで十分なのです。
わざわざ奥の手である「フーガ」を出すまでもない、という彼の絶対的な自信の表れとも言えます。
第二に、前述の通り、燃費の問題です。
広範囲を焼き尽くすほどの術式は、相応の呪力消費を伴うはずです。
五条悟との戦いのように、一瞬の油断も許されない長期戦では、呪力のリソース管理が極めて重要になります。
決め手にならない場面で大技を使い、呪力を消耗するのは得策ではありません。
そして第三に、最も大きな理由として、五条悟との戦闘では「フーガ」よりも優先すべき戦術があった、という点が考えられます。
あの戦いで宿儺が最も腐心したのは、五条の「無下限呪術」をどう攻略するか、でした。
そのために彼は、伏黒恵の肉体を乗っ取ることで得た「十種影法術」と、その最強の式神「魔虚羅」の適応能力を最大限に活用することを選びました。
魔虚羅の能力を裏で稼働させながら、自身は領域展延や領域展開で応戦するという、極めて高度な呪術戦を展開していたのです。
この状況下で、さらに別の術式である「フーガ」を併用するのは、さすがの宿儺でも困難だったのかもしれません。
つまり、使わなかったのではなく、より有効な戦術を優先した結果「使えなかった」あるいは「使う必要がなかった」というのが実情に近いでしょう。
宿儺がフーガを使うのはなぜなのか考察
では逆に、宿儺が「フーガ」をあえて使用する場面には、どのような意図があるのでしょうか。
彼の性格や戦闘スタイルから考えると、単に敵を倒す以上の、特別な意味合いが込められているように思えます。
その意図が最も顕著に表れたのが、漏瑚との戦闘です。
漏瑚は大地から生まれた特級呪霊であり、その術式は火山や炎を操る「火礫蟲(かれきちゅう)」でした。
彼は自身の炎に絶対的な自信と誇りを持っており、宿儺に対しても「火力の違い」を見せつけようとしました。
これに対し、宿儺はあえて同じ「炎」の土俵で応じます。
そして、漏瑚の最大出力の技を遥かに凌駕する「フーガ」を放ち、格の違いを徹底的に見せつけて勝利しました。
これは、相手の得意分野で完膚なきまでに叩きのめすことで、自身の絶対的な優位性を示すという、宿儺の残忍かつ王者のようなプライドの表れと言えます。
相手への敬意の形が「全力で潰す」ことである宿儺にとって、これは漏瑚への最大級の手向けだったのかもしれません。
また、魔虚羅に対して「フーガ」を使用した場面では、より純粋な攻撃手段としての意図が見えます。
魔虚羅はあらゆる事象に適応してしまう厄介な能力を持っており、中途半端な攻撃は通用しません。
宿儺は領域展開「伏魔御厨子」で一度は魔虚羅を葬りましたが、それすらも適応される可能性がありました。
そこで、適応の暇を与えないほどの最大火力で、確実に消滅させるために「フーガ」を選択したと考えられます。
このように、宿儺が「フーガ」を使うのは、相手の誇りを砕くための「見せしめ」としての意図や、難敵を確実に葬るための「切り札」としての役割があると言えるでしょう。
元ネタ?実在した両面宿儺の伝承
『呪術廻戦』のキャラクター「両面宿儺」には、明確な元ネタが存在します。
それは、日本の飛騨地方(現在の岐阜県北部)に伝わる伝説上の人物「両面宿儺(りょうめんすくな)」です。
興味深いことに、この伝説上の人物は、史書と地域の伝承で全く異なる二つの顔を持っています。
『日本書紀』における「凶賊」としての宿儺
8世紀に成立した日本の正史『日本書紀』には、両面宿儺が朝廷に逆らう「凶賊」として記録されています。
そこには「一つの胴体に二つの顔があり、それぞれ反対側を向いていた。手足は四本ずつあり、ひざはあったが、ひかがみ(膝の裏)と踵がなかった。力強くすばしこく、左右に剣を帯び、四つの手で二張りの弓矢を用いた」と、異形の怪物として描写されています。
そして、最終的には朝廷から派遣された武将・武振熊命(たけふるくまのみこと)によって討伐されたと記されています。
『呪術廻戦』における、人知を超えた力を持ち、人々から恐れられる「呪いの王」という設定は、明らかにこの『日本書紀』の記述がベースになっていると考えられます。
飛騨地方における「英雄」としての宿儺
一方で、両面宿儺が根付いていた飛騨地方では、彼を英雄として崇める伝承が数多く残っています。
地域の伝承では、彼は鬼や毒龍を退治して人々を救い、仏教を伝えて寺院を開いた偉大な豪族であったとされています。
二つの顔は広い視野を持ち、四本の手足は農耕や武術に長けていたことの象徴とされ、神様や観音様の化身として信仰の対象にさえなっているのです。
このように、中央政府の歴史書では「まつろわぬ民(従わない人々)」の象徴として悪役とされ、地元では地域を守った英雄として語り継がれる、という二面性を持っています。
この「悪」と「善」の二面性は、作中の宿儺のキャラクター造形にも深みを与えています。
彼は残虐非道な「呪いの王」でありながら、強者に対しては敬意を払うような一面や、独自の美学を持つカリスマ的な存在として描かれています。
この複雑な魅力は、元ネタである伝説の二面性に由来しているのかもしれません。
まとめ:宿儺のフーガとは何か?謎を総括
- 宿儺の「フーガ」とは、絶大な火力を誇る謎多き炎の術式である
- 初登場は渋谷事変で、特級呪霊の漏瑚を圧倒的な火力で焼き尽くした
- 宿儺の技は斬撃が主であり、「フーガ」は奥の手的な特殊な位置づけにある
- その正体は、二つ目の生得術式であるという説が有力視される
- あるいは、術式「御厨子」の調理工程(焼く)の一部だという説もある
- 使用頻度が低いのは、戦術的な判断や燃費の悪さが理由と考えられる
- 五条悟との戦いで使わなかったのは、「十種影法術」の攻略を優先したためである
- 漏瑚戦で使ったのは、相手の得意な土俵で格の違いを見せつける意図があった
- キャラクターの元ネタは、日本の飛騨地方に伝わる伝説上の人物「両面宿儺」である
- 伝承の両面宿儺は、史書では「凶賊」、地元では「英雄」という二面性を持つ