カクヨムで連載され、瞬く間に話題となったネット発のモキュメンタリーホラー『近畿地方のある場所について』。
そのあまりのリアリティから、「これは実話ではないか?」と読者の間で様々な考察が飛び交っています。
物語の舞台とされる「近畿地方のある場所」は、一体どこなのでしょうか。
多くの読者が、そのモデルとして大阪と奈良の府県境にそびえる「生駒山」を挙げています。
また、物語の鍵を握るダムの存在から「滝畑ダム」との関連性を指摘する声も少なくありません。
この記事では、ネット上の膨大な情報を整理し、『近畿地方のある場所について』の舞台の謎に迫ります。
物語のモデルとされる場所はどこなのか、元になった実話は存在するのか、そして衝撃的なネタバレを含む結末の考察まで、徹底的に解説していきます。
『近畿地方のある場所について』舞台は生駒山?
『近畿地方のある場所について』は無料で読める?
結論から言うと、『近畿地方のある場所について』は、Web小説サイト「カクヨム」にて全話を無料で読むことが可能です。
作者である背筋(せすじ)氏が、より多くの人にこの物語を届けたいという思いから、無料で公開しています。
そのため、気になった方は誰でも、今すぐに物語の世界に触れることができます。
カクヨムでの閲覧方法
カクヨムは、KADOKAWAが運営する日本最大級のWeb小説サイトです。
パソコンのブラウザからはもちろん、スマートフォン用のアプリも提供されており、場所を選ばずに手軽に読書を楽しめます。
会員登録をしなくても作品を読むことはできますが、登録(無料)をすれば、お気に入りの作品をフォローして更新通知を受け取ったり、自分の読書状況を記録したりできるため、より快適に利用できるでしょう。
アプリを利用すれば、作品をダウンロードしてオフラインで読むことも可能です。
書籍版との違いと注意点
『近畿地方のある場所について』は、その人気から2023年に書籍化もされています。
書籍版には、Web版では語られなかった後日譚や、登場人物の背景を掘り下げる書き下ろしエピソードが追加されており、Web版を読んだ方でも新たな発見がある内容になっています。
無料で読めるWeb版は非常に魅力的ですが、いくつか注意点もあります。
まず、当然ながら閲覧にはインターネット通信が必要です。
長編作品のため、Wi-Fi環境がない場所で読む際は通信量に注意しましょう。
また、プラットフォームの仕様上、広告が表示される場合があることも念頭に置いておくと良いです。
いずれにしても、物語の根幹部分はWeb版で完全に楽しむことができます。
まずは無料で作品の世界観に触れてみて、さらに深く知りたくなったら書籍版を手に取ってみるのがおすすめです。
『近畿地方のある場所について』のモデルを解説
『近畿地方のある場所について』の舞台モデルは、特定の一箇所ではなく、複数の実在する場所や心霊スポットの特徴を組み合わせた「架空の場所」である、と考えるのが最も妥当です。
作者は、読者に「自分の知っているあの場所かもしれない」と思わせることで、モキュメンタリーとしてのリアリティを極限まで高めています。
物語の舞台は「大阪と奈良の県境に南北に連なる山」と描写されており、この地理的条件から多くの読者が「生駒山地(いこまさんち)」をモデルとして挙げています。
生駒山地は、実際に大阪府と奈良県の間に連なっており、古くから信仰の対象であると同時に、数々の都市伝説や怪談の舞台ともなってきた場所です。
霊山としての神秘的な雰囲気と、都市部に隣接する身近さが同居する生駒山地は、物語の不気味な空気感を醸し出すのに最適なモデルといえるでしょう。
しかし、物語の重要な要素として登場する「ダム」は、生駒山地には存在しません。
ここで浮上するのが、大阪府南部にある「滝畑ダム(たきはたダム)」です。
滝畑ダムは関西地方で最も有名な心霊スポットの一つであり、作中で描かれるダムのイメージと合致する点が多く見られます。
このように、作者は生駒山地の地理的特徴をベースにしつつ、滝畑ダムのような有名な心霊スポットの要素を取り入れることで、現実と虚構が入り混じった、生々しい恐怖を感じさせる「近畿地方のある場所」という架空の舞台を巧みに創り上げているのです。
結局、物語の場所はどこに特定されたのか?
結論として、物語の舞台である「近畿地方のある場所」は、作者によって具体的な地名が明かされておらず、現在も特定には至っていません。
これは、意図的に場所を曖昧にすることで、物語の恐怖を普遍的なものにし、読者一人ひとりの想像力に委ねるという創作上の狙いがあると考えられます。
前述の通り、多くの読者の考察によって「生駒山地」がモデルの最有力候補とされています。
「大阪と奈良の県境」「南北に連なる山」「複数の宗教施設が混在する」といった作中の描写は、生駒山地の特徴と驚くほど一致します。
しかし、物語を読み進めると、意図的に現実の地理とずらしている箇所も見受けられます。
例えば、作中では山の西側(大阪側)にダムがあるとされていますが、実際の生駒山地に大規模なダムは存在しません。
これは、作者が特定の場所への中傷を避けつつ、物語に必要な要素(この場合はダム)を配置するための創作上の工夫でしょう。
場所を特定させないことには、大きなメリットがあります。
それは、読者が「この不気味な話は、自分の家の近くかもしれない」「いつも通るあの山道も、実は…」という、身近な恐怖を感じられる点です。
もし舞台が「〇〇県の△△山です」と断定されてしまえば、その地域以外に住む読者にとっては、どこか他人事になってしまうかもしれません。
あえて場所を曖昧にすることで、日本中どこにでも起こりうる出来事として、恐怖の普遍性を獲得しているのです。
そのため、「場所はどこか?」と探求することは物語の楽しみ方の一つですが、その答えは「あなたのすぐそばかもしれない」ということなのかもしれません。
『近畿地方のある場所について』は実話が元?
この物語はフィクション、つまり創作です。
しかし、多くの読者が「実話ではないか?」と感じてしまうほど、現実の出来事を巧みに織り交ぜています。
これは、フィクションをあたかも事実であるかのように見せる「モキュメンタリー」という手法の効果です。
作者は、物語に圧倒的なリアリティを持たせるため、実際に起きた事件や有名な都市伝説を元ネタとして引用していると考えられます。
作中のいくつかのエピソードは、現実に起きた不可解な事件を彷彿とさせます。
ここでは、特に類似性が指摘されている2つの事件を比較してみましょう。
作中の事件 | 元ネタとされる実際の事件 |
林間学校集団ヒステリー事件 (関西の名門私立R中学校の生徒たちが、林間学校中に原因不明のパニックを起こす) | 京都府の中学生集団過呼吸事件 (2007年頃、京都府内の中学校で、林間学校中に複数の生徒が集団で過呼吸の症状を訴えたとされる事件) |
埼玉一家行方不明事件 (ある一家が忽然と姿を消し、家には大量の鳥居の絵が残されていた) | 広島県一家神隠し事件 (2001年、広島県世羅町で一家4人が失踪。後にダムで遺体が発見された事件) |
共通点と創作部分
表を見ると、大まかな設定に類似点があることがわかります。
集団ヒステリーや一家失踪といった事件の骨子は、現実の出来事から着想を得ている可能性が高いです。
一方で、物語をより恐ろしく、魅力的にするための創作も加えられています。
例えば「埼玉一家行方不明事件」で印象的な「大量の鳥居の絵」というディテールは、元ネタとされる広島の事件には見られない、作者独自の創作要素です。
この不気味な創作部分こそが、単なる事件の模倣ではない、オリジナルの恐怖を生み出しています。
このように、『近畿地方のある場所について』は、実話とフィクションの境界線を意図的に曖昧にすることで、読者に「どこまでが本当の話なのだろう?」と考えさせ、物語の世界へ深く引き込むことに成功しているのです。
『近畿地方のある場所について』と生駒山の謎を考察
物語の鍵を握るダムの存在について
『近畿地方のある場所について』において、「ダム」は単なる背景ではなく、物語の根幹を揺るがす重要な装置として機能しています。
このダムは、怪異が発生し、人々の運命が狂わされる不吉な心霊スポットとして描かれています。
作中では、このダムが古くからの自殺の名所であることが示唆されます。
水辺、特にダムや湖は、古来より心霊現象が起きやすい場所とされてきました。
水の持つ「引き込む」性質や、静かで閉鎖的な環境が、人々の不安や恐怖を掻き立てるのかもしれません。
物語の中でダムは、そうした心霊スポットとしての一般的なイメージを最大限に活用し、不気味な雰囲気を醸成しています。
さらに重要なのは、このダムが怪異の活動拠点、いわば「縄張り」として設定されている点です。
特に、人間を山中へ誘い込み、行方不明にさせる怪異「山へ誘うモノ」は、このダム周辺を主な活動範囲としていると考察されています。
失踪した人々が、最終的にこのダムで発見される、あるいはダムの底に沈んでいるのではないかという暗示は、読者に底知れぬ恐怖を与えます。
なぜ作者は、物語にダムという要素を取り入れたのでしょうか。
一つには、ダムが「自然」と「人工」の境界に存在する建造物だからと考えられます。
雄大な自然の山を切り拓き、巨大なコンクリートで川を堰き止めるダムは、人間の自然に対する介入の象徴です。
そのアンバランスな存在感が、人知を超えた怪異が潜む場所として、説得力のある舞台装置となっているのです。
このダムの存在が、物語に奥行きと、逃げ場のない閉塞感をもたらしていることは間違いありません。
なぜ滝畑ダムが有力候補といわれるのか?
作中のダムのモデルとして、大阪府河内長野市にある「滝畑ダム」が最有力視されているのには、明確な理由がいくつか存在します。
最大の理由は、滝畑ダムが関西地方で最も有名かつ恐ろしい心霊スポットの一つとして、圧倒的な知名度を誇ることです。
このダムにまつわる数々の怪談や噂が、作中で描かれる怪異のイメージと見事に合致するのです。
滝畑ダムにまつわる不気味な噂
滝畑ダムには、数多くの心霊の噂が語り継がれています。
- 滝畑第一~第三トンネル(特に塩降隧道): 「女性の霊が佇んでいる」「首なしライダーが出現する」といった噂が絶えない場所です。特に作中に登場する怪異「ジャンプ女」のイメージと結びつけて考察する読者もいます。
- ダム湖での自殺: 自殺の名所としても知られ、「ダムに車ごと飛び込んだ」「湖に引きずり込まれそうになった」といった話が多く聞かれます。これは、作中で人々が行方不明になる不吉なダムの描写と重なります。
- 周辺での事件: 過去にはダム周辺で痛ましい事件も起きており、そうした事実が心霊スポットとしてのイメージをさらに強固にしています。
これらの不気味な逸話が、作中の陰鬱な雰囲気のベースになっていると考えるのは自然なことです。
カクヨムのコメント欄での示唆
滝畑ダム説を決定的にしたのは、Web小説サイト「カクヨム」のコメント欄に投稿された、ある読者の書き込みでした。
そのコメントには、「近畿で最強スポットは河内長野市にある」「私の友人もその場所で行方不明になった」といった内容が記されていました。
滝畑ダムの所在地がまさに河内長野市であることから、この書き込みをきっかけに、多くの読者の間で「やはり滝畑ダムがモデルで間違いない」という確信が広まりました。
もちろん、このコメント自体が真実かどうかは定かではありませんが、物語のリアリティを追求する読者にとっては、非常に説得力のある情報として受け取られたのです。
これらの理由から、滝畑ダムは単なる候補地の一つではなく、物語の世界観を構成する上で欠かせない、インスピレーションの源泉であった可能性が極めて高いと言えるでしょう。
怪異の正体は?読者の考察まとめ
『近畿地方のある場所について』には、複数の怪異が登場し、読者は断片的な情報からその正体を考察する楽しみがあります。
現在、特に重要とされているのは以下の3つの怪異であり、それぞれが独立しているようで、実は複雑に絡み合っていると考えられています。
怪異の名称 | 正体・目的(有力な考察) | 特徴・活動範囲 |
山へ誘うモノ | 古くから山に棲む神や妖怪のような存在。人間を山に引き込み「しもべ」にするのが目的とされる。 | 山の西側(ダム側)が主な縄張り。猿のような姿とも言われる。自然の畏怖の象徴。 |
ジャンプ女 | 我が子「あきらくん」を事故で亡くし、蘇らせようとした結果、悪意ある存在に変貌した母親。呪いを広めるのが目的。 | 山の東側(住宅地側)が主な活動範囲。都市伝説的な存在。人間社会の歪みの象徴。 |
あきらくん | ジャンプ女が蘇らせようとして失敗し、邪悪な何か(悪魔?)が入り込んだ存在。 | ジャンプ女と共に行動する。幼い子供の姿をしているが、その本質は計り知れない。 |
怪異たちの奇妙な関係性
考察によると、「山へ誘うモノ」は古来からの土着的な怪異であり、「ジャンプ女」は比較的新しい都市伝説的な怪異とされています。
この二つの怪異は、生駒山地を挟んで西と東で棲み分けているかのような描写があり、互いに干渉しない、あるいはできない関係性にあると推測されています。
物語の核心は、「ジャンプ女」が自らの呪いを広めるために、山のルールを破って活動を始めた点にあるのかもしれません。
謎のシール【女】と【了】の意味
作中には、「【女】」と「【了】」という文字が書かれた謎のシールが様々な場所に貼られている描写があります。
このシールの意味についても、活発な考察が交わされています。
- 呪いのマーキング説: ジャンプ女が、次に呪いの対象とする人物や場所に貼っているという説。
- 結界・縄張り説: 「山へ誘うモノ」が、自分の縄張りにジャンプ女が入ってこないようにするための結界として貼っているという説。「女」と「了」を組み合わせると「好」という字に似ることから、何らかの意味をなしている可能性も指摘されています。
これらの怪異や謎めいたアイテムが、物語に深い奥行きを与えています。
点と点であった怪談が、考察を通じて一つの線として繋がっていく瞬間に、この作品の醍醐味があると言えるでしょう。
結末は?核心に触れるネタバレ解説
『近畿地方のある場所について』の結末は、これまでの恐怖がすべて一つの計画の上に成り立っていたことを示唆する、衝撃的なもので締めくくられます。
物語を追ってきた読者の背筋を凍らせる、その核心的なネタバレを解説します。
結論として、この物語の語り手であるオカルト雑誌のライター「私」は、怪異「ジャンプ女」によって、彼女の呪いを世に広めるための新たな媒体として選ばれてしまいます。
これまで「私」が行ってきた一連の調査や取材は、すべてジャンプ女の手のひらの上で踊らされていたにすぎなかったのです。
物語の終盤、「私」は失踪した先輩編集者・小沢が残した手記を発見します。
そこには、小沢自身もまた、この怪異に取り憑かれ、呪いを広めるための本を出版させられそうになっていたことが記されていました。
小沢は最後の抵抗として、原稿を世に出す前に自ら失踪することを選んだのです。
しかし、その役割は、皮肉にも小沢から調査を引き継いだ「私」に受け継がれてしまいました。
「私」は、まるで何かに憑かれたかのように、これまでの調査記録を一つの原稿にまとめ上げます。
そして、その原稿を出版社に送付したところで、物語の幕は閉じられます。
つまり、私たちが読んでいるこの『近畿地方のある場所について』という物語そのものが、ジャンプ女の呪いを拡散するために「私」が書かされた”呪いの本”だった、というメタフィクション的な構造になっているのです。
この結末は、読者である私たち自身が、物語を読むという行為を通じて、呪いの拡散に加担してしまったのかもしれない、という恐怖を突きつけます。
物語は終わっても、恐怖は終わらない。
そんな後味の悪さと、見事な構成力が、この作品を単なるホラー小説ではない、特別な存在に押し上げている理由です。
2025年に公開が予定されている実写映画で、この衝撃的な結末がどのように映像化されるのか、多くのファンが期待を寄せています。
まとめ:『近畿地方のある場所について』生駒山の謎と真相
- 『近畿地方のある場所について』は「カクヨム」で全話無料で読める
- 物語の舞台は特定されておらず、複数の場所を組み合わせた架空の場所である
- 舞台の最有力モデルは「生駒山地」だが、ダムの存在など創作も含まれる
- 作中のダムは、関西屈指の心霊スポット「滝畑ダム」がモデルとされる
- 物語はフィクションだが、実際の事件や都市伝説が元ネタになっている
- 主要な怪異は「山へ誘うモノ」「ジャンプ女」「あきらくん」の3つである
- 生駒山地の東西で、土着的な怪異と都市伝説的な怪異が棲み分けていると考察される
- 謎のシール【女】と【了】は、呪いのマーキングや結界と推測される
- 結末は主人公が呪いを広める媒体にされるという衝撃的なものだった
- 読者自身も物語を読むことで呪いの拡散に加担させられるメタ構造を持つ