『無職転生』の物語を大きく動かしたフィットア領転移事件。「なぜ突然大勢の人が転移したのか」「ナナホシが犯人なのか」と疑問に感じた人も多いでしょう。
結論からいうと、転移事件はナナホシ・シズカが異世界へ召喚されたことと直結していますが、ナナホシ本人が意図的に引き起こした事件ではありません。
さらに原作最終盤までたどると、その根本には未来の「再生の神子」と、日本から召喚された篠原秋人の存在があります。再生の神子が秋人を救うために過去を改変した結果、時空に異変が生じ、ルーデウスの転生やナナホシの召喚へつながりました。
ここからはWeb版最終エピローグを含む、原作最終盤までの重大なネタバレを含みます。
フィットア領転移事件とは?何が起きたのか
フィットア領転移事件は、ルーデウスが10歳の頃に発生した大規模な魔力災害です。
フィットア領にいた住民たちが世界各地へ強制的に飛ばされ、領内は壊滅状態となりました。ルーデウスの家族やエリス、シルフィたちの人生も、この事件を境に大きく変わります。
TVアニメでは第1期第8話「ターニングポイント1」で発生。アニメ公式も、この第8話を物語全体を通して重要なエピソードとして紹介しています。
ルーデウスとエリスは魔大陸へ転移
ルーデウスとエリスは、アスラ王国から遠く離れた魔大陸へ飛ばされます。
そこでスペルド族のルイジェルドと出会い、3人で冒険者パーティ「デッドエンド」を結成。故郷へ帰るための長い旅が始まりました。
アニメ公式のキャラクター紹介でも、ルーデウスとエリスがフィットア領転移事件によって魔大陸へ飛ばされたことが明記されています。
シルフィやルーデウスの家族も離散する
被害を受けたのはルーデウスとエリスだけではありません。
シルフィはアスラ王国側へ飛ばされ、そこで第二王女アリエルと出会います。この出会いが、後に「フィッツ」としてアリエルを護衛する人生へつながりました。
リーリャとアイシャはシーローン王国へ転移。ゼニスはベガリット大陸の転移迷宮に囚われ、長期間行方不明になります。
パウロは家族や被災者を探すために捜索活動を続けることになりました。
つまり転移事件は、一度ルーデウスの周囲にいた人物を世界各地へ散らし、その後の物語を作った大事件です。
無職転生の転移事件の直接的な原因はナナホシの召喚
物語中盤では、フィットア領転移事件とナナホシの召喚が同じ現象だったことが見えてきます。
ナナホシ本人も転移事件について調査しており、自分がこの世界へ来た時期と事件の発生時期が一致していることを認識しています。Web版では後に、ナナホシ自身が「フィットア領の転移事件(私の召喚)」と表現しています。
ナナホシ召喚には莫大なエネルギーが必要だった
ナナホシはルーデウスと違い、死亡して異世界の赤子へ転生した人物ではありません。
日本にいた肉体のまま六面世界へ移動してきた「転移者」です。
ナナホシの召喚研究では、より大きく複雑なものを異世界から呼び出すほど、多くの魔力が必要になることが分かっています。
ナナホシは、自分という一人の人間を異世界から召喚するために必要となった莫大なエネルギーと、フィットア領一帯を巻き込んだ転移災害が関係していると考えていました。Web版でも「私が召喚された時のエネルギーが土地一つを消滅させる程」とする仮説が語られています。
ナナホシは転移事件の犯人ではない
ここで注意したいのが、「ナナホシの召喚が原因=ナナホシが犯人」ではないことです。
ナナホシは自分から六面世界へ来たわけではありません。
召喚術を使ったわけでも、フィットア領の住民を世界各地へ飛ばそうとしたわけでもありません。
本人も突然異世界へ連れてこられ、日本へ帰れなくなった被害者です。
そのため、ナナホシを「フィットア領を消滅させた犯人」と表現すると、事件の因果関係を取り違えてしまいます。
転移事件の真の原因は未来の「再生の神子」にある
フィットア領転移事件の根本的な真相は、ルーデウスの生涯が終わった後に置かれたWeb版最終エピローグ「プロローグ・ゼロ」で明かされます。
そこで登場するのが、未来の世界を何度も繰り返していた「再生の神子」と、日本から召喚された少年・篠原秋人です。
再生の神子は何度も悲惨な人生を繰り返していた
再生の神子は、物体などの時間を巻き戻す特殊な能力を持つ少女です。
彼女は何度人生を繰り返しても国家に利用され、最後には悲惨な死を迎える運命にありました。
そんな彼女の人生に初めて大きな変化を起こした人物が、異世界から召喚された篠原秋人です。
秋人は日本から召喚された少年で、再生の神子にとって初めて「生きたい」と思わせてくれた存在でした。
篠原秋人が戦争で死亡する
しかし、篠原秋人は異世界へ呼ばれた理由を十分に知らされないまま、王国の戦争へ投入されます。
そして戦場で死亡しました。
再生の神子の能力で戻せる時間には限界があり、秋人を蘇らせることはできません。
彼を失った再生の神子は、これまでとは比較にならないほど強く「彼と共に生きたい」と願います。
再生の神子が過去そのものを改変する
再生の神子の力は、単純に物体の時間を戻すだけのものではありませんでした。
本質は「過去を改変する能力」です。
秋人と共に生きられる未来を作るため、彼女が限界まで力を使った結果、その力は遠い過去へ届きます。
Web版「プロローグ・ゼロ」では、甲龍暦400年のフィットア領・ロア上空に時空の裂け目が出現したことが明かされています。
これが、後のルーデウスの転生とナナホシの召喚につながる始まりでした。
ルーデウスの転生もフィットア領転移事件とつながっている
再生の神子が時空の裂け目を作っても、すぐに目的の人物を過去へ送り込めたわけではありません。
世界そのものが、本来存在しない人物が過去へ入ってくることに抵抗していたためです。
その均衡を最初に崩したのが、偶然裂け目を通り抜けたルーデウスの前世の魂でした。
ルーデウスの魂は偶然時空の裂け目へ入った
ルーデウスの前世の男は、日本で交通事故に遭って死亡しています。
その魂が時空の裂け目を通り、六面世界で死ぬはずだった赤子の体へ入りました。
その赤子がルーデウス・グレイラットです。
つまり再生の神子が「ルーデウスを異世界へ転生させよう」と狙って呼んだわけではありません。
秋人を救う未来を作るために開いた時空の裂け目へ、偶然ルーデウスの魂が入り込んだ形です。
ルーデウスが歴史を変えたことで裂け目が広がる
本来の歴史には存在しないルーデウスが生まれたことで、世界の歴史は少しずつ変わり始めます。
ルーデウスはロキシー、シルフィ、エリスなど、本来とは異なる人生を歩む人物を増やしていきました。
Web版最終エピローグでは、ルーデウスの行動によって「世界の抵抗力」が弱まり、時空の裂け目が押し広げられたと説明されています。
そして甲龍暦417年、ついにナナホシ・シズカの召喚が成立しました。
この時に起きた大規模な「辻褄合わせ」が、フィットア領転移事件です。
転移事件の原因を時系列で並べるとどうなる?
フィットア領転移事件は原因と結果が時系列をまたいでいるため、少し分かりにくい出来事です。
流れを並べると、次のようになります。
- 未来の世界で篠原秋人が異世界へ召喚される
- 秋人が戦争で死亡する
- 再生の神子が「秋人と共に生きたい」と強く願う
- 過去改変の力が甲龍暦400年へ届く
- フィットア領・ロア上空に時空の裂け目が生まれる
- ルーデウスの前世の魂が偶然裂け目を通る
- ルーデウスが誕生し、本来とは違う歴史を作る
- 世界の抵抗力が弱まり、時空の裂け目が広がる
- 甲龍暦417年にナナホシが召喚される
- その際の大規模な異変によってフィットア領転移事件が発生する
「未来の出来事が原因となって過去が変わり、その変わった過去が未来へつながる」という構造になっています。
ヒトガミやオルステッドが転移事件の犯人ではない
『無職転生』ではヒトガミやオルステッドが世界の裏側に深く関わっているため、「どちらかが転移事件を起こしたのでは?」と思うかもしれません。
しかし、原作で明かされた真相を見る限り、どちらも転移事件を直接引き起こした人物ではありません。
ヒトガミが仕組んだ事件ではない
ルーデウスは死亡後のヒトガミとの会話で、自分がなぜこの世界へ来たのかを尋ねています。
ヒトガミは、ルーデウスが唐突に現れ、転移事件が起きるまでその存在に気付いていなかったという趣旨の回答をしています。
ヒトガミにはルーデウスの人生へ干渉した数多くの行動がありますが、フィットア領転移事件そのものを起こした黒幕ではありません。
オルステッドも原因を知らなかった
オルステッドにとっても、ナナホシやルーデウス、フィットア領転移事件は、それまでのループには存在しなかった異常な出来事です。
ルーデウスから原因を尋ねられた際にも、転移事件について分からないことが多く、このような出来事は初めてだと答えています。
オルステッドが事件を起こしてナナホシを呼び寄せたわけでもありません。
フィットア領転移事件が物語に与えた影響
転移事件は単なる大規模災害ではなく、『無職転生』の主要人物ほぼ全員の人生を動かした出来事です。
原作では「ターニングポイント」の最初に当たり、ここから物語の方向そのものが変わります。
ルーデウスとエリスの魔大陸編が始まる
ルーデウスとエリスは魔大陸へ飛ばされたことで、ルイジェルドと出会います。
安全なロアで暮らしていた生活から一変し、命を懸けて故郷へ戻る旅が始まりました。
ルーデウスが冒険者として経験を積み、異なる種族や世界の現実を知る最初の大きなきっかけです。
シルフィとアリエルが出会う
シルフィは転移事件によってアリエルの近くへ飛ばされます。
そこでアリエルを救ったことから守護術師となり、後に「フィッツ」と名乗ってラノア魔法大学へ向かいます。
この転移がなければ、大学でルーデウスとフィッツとして再会する流れも大きく変わっていたことになります。
パウロの捜索とゼニス救出へつながる
家族が世界各地へ散ったことで、パウロは転移被災者や家族を探し続けます。
ゼニスはベガリット大陸の転移迷宮に囚われていたため、後にルーデウスたちによる救出作戦が行われました。
その戦いではパウロが死亡します。
遠い原因をたどれば、パウロの死やゼニスのその後も、フィットア領転移事件からつながった出来事です。
無職転生の転移事件はナナホシ召喚が引き金!根本原因は未来の過去改変
『無職転生』のフィットア領転移事件は、ナナホシ・シズカが六面世界へ召喚されたことと結び付いた大規模な転移災害です。
ただし、ナナホシ本人が犯人ではありません。
その根本には、未来で篠原秋人を失った再生の神子が「彼と共に生きたい」と願い、過去を改変したことがあります。
その力によってフィットア領・ロア上空に時空の裂け目が生まれ、まずルーデウスの魂が入り込みました。ルーデウスの存在によって本来の歴史が変化した結果、裂け目が広がり、最終的にナナホシの召喚と転移事件へつながります。
そのため「犯人は誰か」と一人だけを挙げるより、直接の引き金はナナホシの召喚、根本原因は再生の神子による未来からの過去改変と捉えるのが、原作最終盤まで含めた真相に最も近い説明です。
